ブログ小説の十五回目の更新。説明会について。
説明会というサブタイトルはいかがなものか?と考えたのですが、この章で特徴的なものが他に思い浮かばなかったので、元の小説のサブタイトルのままでいきたいと思います。
最初の頃はサブタイトルを既存の映画名から拝借していこうと思っていたんですが、最近ではすっかり元のタイトルのままですね。
もし、今回の章を映画のタイトルからつけるとしたら「ウルフ・オブ・ウォールストリート」かなぁ…。またはアニメから「ゴールデンタイム」というのも良いかもしれない。
色々と考えるのは楽しいんですが、一体どの部分が「ウルフ・オブ・ウォールストリート」でどの部分が「ゴールデンタイム」なのか説明しづらい部分があるので、元ネタ通り「説明会」でいかせてもらいます。
…という事で、過去に書いた小説をブログ形式に変換して投稿していく企画。小説自体のタイトルは映画のような人生をです。
全部で39章分あるのですが、今回はその中で第十五章「説明会」をお送りしたいと思います。よろしくどうぞ。
【ブログ小説】映画のような人生を:第十五章「説明会」
今日は暑かった。蝉の鳴き声でその暑さはいっそう増した。
蝉の一生を考えた。蝉は今のぼくに最も足りないものを持っている気がした。蝉は自分の命の短さを知っているのだろうか。だから頑張って鳴き続けるのだろうか。それとも……。
もし、ぼくがあとわずかの命しかないとわかったら、ぼくは同じように残りの命をまっとうする事は出来るだろうか。わからなかった。自分の事なのに自分の未来が見えなかった。蝉は未来のことなど考えず、絶えず鳴き続ける。
サークルの説明会は十三時から始まった。場所は大学に古くからあるゴシック様式の講堂で、演劇などに使われそうな雰囲気のある建物の中で行われた。
はじめに驚いたのはその人数だった。五百人は入るであろうその講堂に、人がびっしり埋まっていたのである。
「千葉、サークルって言うのはこんなにも人が多いものなのか?」
千葉に耳打ちをして聞いてみる。
「アノニムはインターカレッジサークルやからな。ここの学生だけじゃなく、様々な大学から集まってきているんよね」
「こんな規模の大きいサークルだとは思ってなかったよ」
「だからこその説明会なんやろ。普通はサークルなんかに説明会開かんから」と千葉は笑った。
「なんかすごい所に来ちゃったな」
「これも社会勉強や。会社の説明会に来たと思えばええんよ」
千葉と耳元でささやきながら会話していると、「それじゃ、私はあっちの主催者側の席に行かなくちゃいけないから、しっかり話聞いていってね。今日は代表いないらしいけど、また今度紹介するから」と千秋さんはにっこり笑って去って行った。
ぼくは周りを見回した。なぜか違和感を覚えた。見たことがあるような顔がちらほら見受けられた。入学当初のサークル巡りで一夜限りの親友になった人達だ。
しかし、違和感をぼくに与えているのはこの人達ではない。説明会に来ている人の中には、本当に大学生なのだろうかという人も見受けられた。杖をついたおじいさんや、子供を抱いている主婦のような女性もいた。
もちろん、大学には年齢制限はないので、そのような人が学生であっても不思議ではないのだが、そのような人はあくまでも少人数なのが普通だ。しかし、この場にはそのような人がちらほらどころか、異常なほどに多い気がした。この空間に違和感を覚えるのはそういった理由があるからだろう。
「伊波、そろそろ始まるみたいやから、俺らも席見つけて座ろうや」
ぼくがキョロキョロしていると横から千葉が言った。
ぼくらが座れたのは、舞台上からだいぶ離れた端っこの席だった。ここからでは、千秋さんはほとんど豆粒にしか見えない。しかし、いつも着ている真っ赤なコートが彼女だとわからせた。その千秋さんは檀上の端においてあるマイクに向かって話し出す。
「みなさま、今日はお集まりくださってありがとうございます。そろそろサークルアノニムの説明会を始めさせていただきます。私は今日、進行役を務めさせていただきます、サークルアノニムの副代表、水谷千秋です。今日はよろしくお願いします」
「おい、千葉、千秋さんって副代表だったのか? そんなに偉い立場にいたのか」
驚いた気持ちを抑えるように千葉に耳打ちをして聞いた。
「伊波、考えすぎやで。サークルの副代表っつったってな、千秋ちゃんが三年生やからやっているだけやろ。そんなに偉いもんちゃうから。年功序列や年功序列」と千葉はさらっと説明をした。
「今日は、アノニム代表の神田は一身上の都合によりお休みさせていただいておりますので、代わりに代表から受け取った言葉を副幹部の高橋が読ませていただきます」
千秋さんが説明すると、一人の男が舞台上の真ん中に置いてある机の前に行き、大きな紙を広げた。その男は驚くほどの巨漢で、遠くからでもその大きさはわかった。千秋さんの二倍近くはあるだろう。ぼくは気になった事を千葉に聞いた。
「なぁ、副代表と副幹部ってどっちが偉いんだ」
「そこ気になるやんな」と笑い「でも、さっきも言うたけど、サークルの代表やら、幹部やらって形式上のものやから、どっちとか決まってないんちゃうかな。自分らで言うてるだけや、きっと。気分の問題やな」と説明した。
そういうもんかね、とぼくが思った時、高橋と紹介された男は大きな紙を読み始めた。
【ブログ小説】映画のような人生を:第十五章「説明会」あとがき
いかがでしたでしょうか。いよいよ起承転結の「承」に入ろうとしている場面です。
なんか昔、ストーリーの書き方みたいな本を読んで、起承転結の「起」の部分は、戸惑いを感じながら冒険に出なければならないって書いてあって、それをもろに影響されている作品です。
なんて事ない人生を送っていた主人公が、ある日をきっかけに人生が変わり始める。しかし、その冒険のスタートには、ある種の葛藤がなければならないらしいのです。
たとえばハリー・ポッターも魔法の国へ行く時にすぐに行ったわけではなく、おじさんとかが心配するかもしれないし…と冒険に出ることを戸惑います。
たとえば、エヴァンゲリオンのシンジくんもエヴァ初号機に乗る前に、一旦躊躇するわけです。
…みたいなのをマジマジと考えながら書いていたら、39章あるうちの14章分を「起」に使ってしまいました。
頭でっかちな作品になってしまっていますね。やっとサークルの説明会の所までやってきたよ。うん。ここからが僕がこの作品の軸を考えた時に一番最初に思いついた部分なのです。
という事で、伊波くんはどんなサークルに入ってしまったのか。次回をお楽しみに。こういう怪しいセミナーみたいなのに参加した経験が生きてくるんだなぁ…。
ではでは、【ブログ小説】映画のような人生を:第十五章「説明会」でした。
野口明人
ここまで読んでいただき本当にありがとうございました!またどこかでお会いしましょう!!
【ブログ小説】映画のような人生を:次回予告
注意:
ここから先は次回の内容をほんの少しだけ含みますが、本当に「ほんの少し」です。続きが気になって仕方がないという場合は、ここから先を読まずに次回の更新をお待ち下さいませ。
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「みなさん、こんにちは。アノニム代表の神田です。今日は、私の勝手な都合により、説明会に参加することが出来ませんでした。本当に残念です。ただ、私がみなさんにお伝えしたい言葉は、高橋君にお渡ししておきましたので、高橋君お願いしますね」と言ったところでその男は「どうも、高橋です」と自己紹介をした。
次回へ続く!
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