四国歩き遍路日記21日目。この旅の記録は以前旅をしながら公開していた日記を諸事情によりお蔵入りしまったものを再編集して公開したものです。
今日の一日を読んでいただければわかると思いますが、台風が過ぎ、久しぶりに遠出が出来るようになった僕らは、色々な場所に行き、色々な人と出会います。そこにはプライベートなものやパブリックなものが混在しています。
その中で大切なのは、パブリックな部分にあるプライベートの保護でして、意図せずに誰かを傷つけてしまうという事は避けたい所。
なので、極力その点に気をつけながら、大幅に写真を削除しました。そして大幅に加筆を行いました。なので、読んでいて、
あれ?なんでこれ写真ないんだよ!写真ないとわからないだろ!!
と思う部分もあるかもしれません。ですが、そこらへんを考慮した上での記事だという事をご理解ください。その逆もしかりです。写真はあるのに、詳しい説明がない。そんな部分もありますので想像で補いながらお楽しみください。
ではでは、再編集版よろしくどうぞ。
四国歩き遍路日記21日目のまえがき
この旅は自分が救われる旅のように思っていたが、自分が誰かを助けて周り、それによって自信をつけて行って救われる旅なのだと思った。
そんな風に思う出来事が今日はあったのです。
→他の日の四国歩き遍路日記はこちらにまとまっています、合わせてどうぞ。
※復刻にあたり、旅先で沢山写真を撮ったものをアップすることにしました。Facebookの方へアルバムを作りましたのでそちらもお楽しみくださいませ。
嵐のような夜が過ぎ、台風一過の晴れ模様…
台風一過とはよく言ったものである。昨日の天気が嘘のように晴れた。空気もジメジメ感がなくなり気持ちが良い。
…どーでも良いことだけれど、僕は昔「台風一家」だと思っていた。台風1号父さんと台風2号母さんの間に生まれた台風3号。
彼らは腰に巻いたベルトに強烈な風を当てる事で、強力な力を手に入れ、悪と闘うのだ。ダブルタイフーン〜命のベルトォー♪力と技の風車が廻る♪
父よ〜母よ〜妹よ〜。
…ってな具合に。台風一家V3。
いやはや。ご清聴ありがとう。
あれだけ靄がかっていた山もくっきり見える。やはり朝起きて目の前に山が見える環境と言うのは嬉しい。空気も美味いぜ。ぐふふ。
朝ごはんはおでん。窓を全開にする
今日の朝ごはんは昨日に引き続きおでんです。おでんの汁がいい具合に浸ってきて美味い。おでんとカレーは二日目の方が美味しいよね。桃のヨーグルトも相変わらず美味い。…うまいものばかりで太る太る。
ご飯を食べた後、先生の指示で僕が寝させてもらっている母屋の窓を全開にする。風通しを良くし、湿気を飛ばすのだそうだ。ガラス窓なら問題ないが障子の窓なので、湿気は天敵。
家も生きていることを実感。家って人が住まないようになると途端に駄目になるって聞くけど、こういう作業をしなきゃ家も苦しいのだね。
江戸時代から存在しているこの母屋には、人々のそういう日々の習慣の積み重ねという歴史が刻まれているのだなぁ〜。すごいな〜。
寒くなってきただろうと先生が出してきた洋服が…
さてさて。先日、お遍路の旅の途中である僕には洋服が少ないという事で、仕事の作業着として作務衣を出して頂いたというのを書いたと思う。
仕事を手伝う時はその作務衣を着ているのだけれど、普段着は半袖のポロシャツ1枚しか持ってきていない。お遍路を行う時は白装束を羽織るので、白いアンダーシャツに白装束。そうじゃない時用のポロシャツ1枚である。
そうじゃない時(ちょこっと観光をする時とか)なんてほとんどないと思っていたので、私服は少ないのだ。そして寒くなって来た時のウィンドブレーカー。それが僕の洋服の全てであった。
荷物になってはいけないと思ったので、それしか持ってこなかった。最初は45日で88箇所を周る予定だったので、寒くなる前に周れるだろうと。こんなに滞在する事を想定していなかったから。
先生のご自宅にお邪魔する時はいっつも同じ格好。
ウィンドブレーカーは洗えないし、そんなに日常的に着るものではないのだけれど、ここの所ずっと着ているのでちょこっと傷んできてしまっている。
そんな僕に先生が洋服を出してきてくれた。本当にここにはなんでもあるものだ。ビックリするのはでっかい僕の体にも適応出来るサイズまで揃っているという事だ。
なかなか僕好みのシャツ。
先生は全くオシャレに興味がないと言っていた。洋服は機能性で選んでいるらしい。胸ポケットがない洋服に自分でポケットを付けたり、要らない袖をチョキンと切ってしまってベストにしたりしている。
さらには穴が開いても使いやすいものは着れる所までとことん着るという徹底ぶり。だから先生を知らない人が訪ねて来たときに、先生に向かって「先生はどちらに?」とか聞かれる始末。
「まさか小汚いおっちゃんが先生だとは誰も思うまい。ワッハッハー」と先生は楽しそうに笑っていた。オシャレには無頓着。それが先生なのだ。
しかし、あることに気がつく。
MADE IN ITALY…。
DOLCE & GABBANA…。
「まったく着ないけん、作業着として着ればいい」
と、ポンと渡された服はブランド物!!!
お話したとおり、先生は服に全然興味がない。なのになぜこんなブランドものが!?ビックリした僕が先生に尋ねると奥さんが色々買ってくるのだそうだ。
本当にすごい人だな…と、思った。ドルガバを作業着に。うーむ。大切に着させてもらおう。
台風の影響はすごかった…
ドルガバのシャツとともに、ズボンも何着か拝借した僕。これでどこでも行けるぜ!!という事なのだが、色々と見て廻って、その惨状に僕は愕然とした。台風一過のあとの状況を少しご覧いただこう。
いつもは鯉が優雅に泳いでいる姿が見えるのに、濁ってしまって全く見えない。
鯉はこんなに水が濁っていて前が見えるのだろうか?…というか、ちゃんと生きているのだろうか?
あ、うっすら泳いでいるのが見える。
良かった。
枝がボキボキに折れてしまっている。
風の強さが伺える。こんな強風を一身に受けなければならないなんて、植物というものは難儀なものだ。
道から水は引いたが落ち葉や枝が道を塞ぐ。
枝がタイヤに巻き込まれやしないか心配だ。
水が流れていた場所は逆に綺麗に洗い流されている。
まだ山からは水が勢いよくゴーゴー落ちてくる。
山に流れる川はだいぶ水位が上がっており、水の流れがすごい。いつもはここの川はもっと澄んだ水で、流れも穏やかなのに。
そして皆さんご存知、三大暴れ川のひとつである吉野川。何かにつけて氾濫してしまう川。
その吉野川も幅が広がり、水位がすごい。潜水橋の写真撮るの忘れてしまったが、だいぶ高くまで水が来ていた。あぁ。なんで大切な部分の写真を取り忘れてしまったのだ。それこそ一番見せたい所だったと言うのに…。
ラーメンをおかずに食べるもの
さてさて。台風の影響を一通り知ってもらった所で、話を今日の一日に戻そう。
お昼まで、散歩をしたり、パソコンで作業を進めた。
そして時間は過ぎ、昼食。
今日のお昼は肉とニラのラーメンだった。ラーメンをおかずにラーメンを食う。どんぶりに入らなかったとお椀に盛ったのだ。
美味いし太るし、罠だらけ。ここが注文の多い料理店ならば僕は絶好の客になるかと思う。美味しそうな食材がやってきたぞ…イッヒッヒー。
ま、こんなに美味しいものばかり食べられて幸せですな〜。スープうまー!
ちなみに、昔、階段から落ちて首を強く打った時から僕は胸の辺りが慢性的に痛いのだが、寒くなってくるとしきりに痛くなる。それを先生に話をすると先生がマッサージをしてくれた。
先生はツボの場所までも心得ている。処方してもらうと、少し痛みが和らいだ。
それにしても立場が逆であろうに…。僕が先生をマッサージせねばならない歳だというのに。何から何まで先生は優しい方だ。
今日は櫻茶屋へ
ご飯を食べ終え、山を降りる。色々と街の風景と台風の影響を見ながら目的地へ。
今日は櫻茶屋という徳島市にある喫茶店に行くのだそうだよ。
この櫻茶屋。一階は喫茶店だが、二階をギャラリーとして期間で貸し出して、個展などに活用しているらしい。ちょこっと見学させてもらおう。
うおーー。本格的!!!美術館に来たみたいだ。
ふむ。いい仕事してますなぁ〜。
それにしても…
こんなに沢山。美しい陶器。これを全部一人が作り上げたのだと思うとスゴイ!普通、お店に並んでいるものは機械が作っているものが多いのだろうけど、人の手で作ったものは、どれもこれも同じものはなく、少しずつ違っていて味がある。
このコンクリート打ちっ放しっていうのが、陶器にすごくマッチしているね!
ベランダにも出ることが出来る。目の前は徳島最大の市場なのだそうだ。
こんな方の作品展だったよ。僕と同い年ぐらいの人かなって勝手に思っていたけど、年齢を聞いてビックリした。人の年齢というのはまったくもってわからないものだ。
先生は、その方と話をし、俳人になったと嬉しそうに語っていた。僕が作ったブログがなんかちゃんと役に立っている気がして嬉しくなる。「生きがいを見つけた」という先生の言葉が僕の胸を打つ。
そして、一通り会話などを楽しんだあと、櫻茶屋を後にし、次なる目的地へ。
買い物依存症と僕
向かった先は先生の知り合いのおじさんの家。先生の知り合いの方とは前に一度あった事がある。
ものすごーーく若く見える人だ。ハタチの子供が2人いるとは全く思えないほど若く見える女性。美魔女というものはまさにこの人の事を言うのだな…と思う感じ。なんなんだ。出会う人出会う人、年齢不詳じゃないか…。徳島は不思議な徳を積む島。
その人の親戚のおじさんが、痴呆が出始めて入院しているようなのだが、それまでに買い物依存症で買いためた商品が封も開けずに家に溢れているらしい。
その商品を処分したいのだが、業者に頼むと異様な程莫大なお金がかかってしまう。
捨てるにもお金が必要なのだ。
それなら商品を売ったらいいではないか?とブックオフなどに持って行ってはみたものの、アホちゃうか?と思ってしまうほど安い値がついたので引き返してきた。
少しでもおじさんの治療の方にお金が回せないものだろうか。
そう考えてはいるものの、方法がわからない。そこで先生に相談してきたのだが、先生には物の価値がわからないものが多い。
先生は安いものでも長く使い、ものを大切にする。ブランドなんて関係ないのだ。
そこで僕の登場である。趣味が多くて助かった。いろいろな物を見て、これは相場でこのぐらいかな?と言うのを推測する事が出来る。数が多いため、瞬時に判断しなければならない。
それにネットに強いのも功を奏したようである。ブックオフでは値がつかないものでも、色々と工夫すればちゃんとした値で売ることが出来る。
僕は家中を見て回ることにした。
足の踏み場も無いほどの物、物、物。
しかもその物のほとんどが新品で未開封。僕はその不思議な光景に目を奪われた。
ビデオ、本、CD、DVD、液晶テレビ、健康食品、資格取得の教材、各地の名産物…etc。
その山のような物達を1つ1つ見ていく。そこで何か変な感覚に襲われる。なんだろう。
…その違和感に気がつき唖然とした。同じものが2つ3つあるのだ。
同じ商品である。買ったことさえも忘れてしまうのか。それとも保存用、観賞用、布教用と用途を分けて買ったのだろうか。買い物依存症とはこういうものなのかと言うのを少し垣間見た気がする。
買うことが目的であり、買った物が目的ではないのかもしれない。だから封も切らないし、同じものだって複数買ってしまう。さて、この大量の物たちをどうしたものか。
おじさんの記憶…
ん?
おじさんは音楽が好きだったという。この家にはとにかく膨大な数のCDがあるが、ほとんどはクラシック。そしてちょっとの歌謡曲。確かにこの機種ならクラシックに最適な機種だ。たしか35万円ぐらいしたアンプだった気がする。
あぁ。おじさんにはあったことがないが、なんとなく光景が頭に浮かぶ。優雅な音楽の中で湯気の立ったコーヒー。耳と口に同時に広がる幸せな音色。
なんと素晴らしい時間。外を眺め、たそがれる。
オーディオのプチヲタクな僕は嬉しくなり、少しでも力になれたらいいなぁと思った。僕の力が人に役立つのかもしれない。
少しでも協力できたらいいな。僕は色々と商品の写真を撮らせてもらい、個々での対応をあれこれ考えることにした。
次なる目的地は…
ある程度目処をつけて、その場を後にする。車に乗ろうとした時、下になにやら髪の毛が落ちてた。
…。
こわっ!
こわわっ!!
次なる場所は前に栗おこわを持ってきてくれた夫妻のいる場所へ。
何でも作るよ、囲炉裏まで
辺りはだいぶ日も暮れてきた。気が付かないうちに時間が過ぎていたようだ。車を長いこと走らせ、夫婦のやっているというお店についた頃には周りはもう真っ暗だった。
お店に入ると、コーヒーを出してくれた。全く周りから見たらわからないが、人見知りバンザイな僕はなんとなく居心地の悪い思いを抱えながら椅子に座ってコーヒーをすする。
人見知りを周りに知られないように喋りまくる。だから人見知りだとは気が付かれないのだ。しかし僕の目は泳ぐ泳ぐ。スイスイ泳ぐ。
その泳いだ先に、とあるものを見つけた。
それがこれ。囲炉裏。いろりをじろり。
僕がその囲炉裏を見つめていると先生が「これもワシ作った」と教えてくれた。
一体何者なのだ、先生!怪人20面相のように色々な面を持つ先生。話を聞いても聞いても話題が尽きず、勉強する事がいっぱい。記憶からこぼれ落ちないようにしなければ!!
コーヒーをすすり終え、目的の物を夫婦にわたすと僕らはその場をあとにした。
夕飯はチャイナでチャイナ!
「夕飯なに食べよう?」と聞かれたので、中華が良いです!と即答で答えた。中華って、チャーハン、油淋鶏、小籠包などなど、ビックリするほどなんでも美味しい。僕にとってハズレがないのだ。
だから「何食べる?」と聞かれたらとりあえず僕は中華と答えるようにしている。
そして連れて行ってもらったお店の名前をみて僕は吹き出す。
チャイナ。
まんまやないかーい!正直もの過ぎる店名。こりゃー、中華のお店ですわ。なんのひねりもなくシンプルイズベスト!!
…しかし。
料理はボリューム満点!鳥の唐揚げ定食780円!
唐揚げうまー!!僕は唐揚げが大好きで、いままで唐揚げ専門店を食べまわって来たが、どれも満足出来るものではなかった。
実家の母に作ってもらう唐揚げがやはり1番美味しいのだ。
その唐揚げの味に非常に近い唐揚げ。美味い。飯がすすむ!
僕が美味そうに唐揚げを食べていると、先生がご飯を分けてくれた。チョモランマ盛り!
ごちそうさまでしたー。
八万温泉、大人500円
美味しいご飯を食べ終え、今日も新しい温泉に連れて行ってくれた。その名も八万温泉!料金は大人1人8万円!僕はそんな大金を持っているはずもなく、先生たちがお風呂に入っていく背中を淋しく見送った。
…というのは冗談。
本当の料金は500円なり!お風呂屋通になりつつある僕。ここのお風呂の500円は安い!!ぜひとも行ってもらいたいお風呂やさんのひとつである。
正直な話、ここに入った時は「狭い!サウナもないのか!値段相応だな…」と思ったのだが、そう思うには早計であった。扉が1つあり、そこを開けると水風呂、サウナ、露天風呂が広がっていたのだ。
露天風呂は貸し切り!誰もいない。僕は誰もいない風呂の前ですっぽんぽんで阿波踊りをした。
ドライヤーが有料20円だったが、それを差し引いても500円はイイ!
前は400円で、扉の向こう側が有料だったようだが、一律500円にして全開放したんじゃなと先生が言ってた。
先生たちは、扉の向こう側がまだ有料だと思って入らなかったようだ。僕だけ得をしてしまった。本当に最近料金体系を変更したんだね。
ここの写真は複数枚撮ったので、アルバムの方に載せておきます。良ければぜひ足を伸ばしておくんなまし。良いお風呂屋さんだよ。
そして山を登る。その時!!
なんだかんだで午後から色々な場所に行って、色々な人に会って緊張していたのか、お風呂に入るとドット疲れが出た。その温かい体のまま、車に乗るとなんとも眠気が襲ってくる。
しかし、僕のポリシーとして車では絶対に寝ない。運転している人に悪いからね!僕は助手席で時々、息を止め、脳に酸素をグルングルンと送った。
眠い時はこれ。ちょっと息を止める。すると脳が酸素が!酸素がない!!と認識して、ガッと酸素を取り込もうとする。そして息を吸い込む。すると眠気がブワーッと吹っ飛ぶ。
そんな野口流睡魔討伐術を10回、20回と行ったが、睡魔は全く去っていってくれぬ。眠いもんは眠い!!
その時である。
この山登りで初めてオスの鹿を見た!ハッキリとみた!
デ、デカい!
僕の睡魔はあっという間にどこかに消えていた。やはりあんな変な睡魔討伐術よりも自然の世界への感動の方がよっぽど脳に酸素を与えてくれるらしい。写真を撮らねば!!
何度も写真を撮ろうとしてうまく撮れていないからね!
やつは、逃げもせず、写真撮るならどうぞとばかりにポーズを撮り、満足したか?と言わんばかりにパカパカと去っていった。満足しかよ。ありがとう。シカ。
はいよー。
四国歩き遍路日記21日目のまとめ
歩き遍路を始めた理由は救いを求めてのことだった。ずっと自信がなく、人と関わるのが怖くなってた。
寺を周り、般若心経を唱えれば何かが変わると思っていた。
でももしかしたら、この旅は自分が人の役に立つことで自信を取り戻していく旅なのかもしれない。
出会う人全てが空海さん。その力を借りて修行させてもらっているのかもしれない。
救いを求める旅から人々を救う旅への変換点。
前にもちょっとその事は思ったけれど、実際に色々と目で見てみて僕に出来る事が具体的に見えてきて、実感が湧いた。
人生には必ずどこかでガラリと変わるターニングポイントというものがあるという。
そのターニングポイントが『四国歩き遍路日記21日目』の今日なのではと思ったことよ。
そんな事をカツサンドを頬張り、考えた僕。