四国歩き遍路日記28日目。この旅の記録は以前旅をしながら公開していた日記を諸事情によりお蔵入りしまったものを再編集して公開したものです。
人はなぜ悩むのだろうか。僕もあなたも、わたしも君も、その子もあの子もみんな悩んでいる。悩みながら生きている。
もちろん、悩みに大小はあるだろう。
今日の夕食の献立に悩む人もいれば、明日どうやって生きていくかで悩む人もいる。
「世の中にはもっと大変な人がいるんだから、そんな事で悩むなよ」
そんな言葉を何度言われただろう。しかし、そんな事を言われた所で悩んでしまうのである。悩んで苦しいのである。苦しくて悩んでいるのである。
僕の願いはひとつだけ。
早く、この状況を抜け出したい。
ぶっちゃけ他人のことなど関係ないんだ。あの子が悩んでいるからと言って、僕の悩みがなくなるなんて魔法は存在しないのだ。
…そんな事を考えていた僕ですが、今日の一日はなにか悟りを開いた気分になったという話です。
ではでは、再編集版よろしくどうぞ。
四国歩き遍路日記28日目のまえがき
最近はなんだか気分が落ち込む事が多いけれど、それとともに考える事も多く、出会いの刺激とともに脳内が活性化されている気がする。
色々な人と出会い、色々な状況を聞き、それについて考える。それによって自分とはどういう存在なのかがわかってくる。よくよく自分探しの旅なんて言葉を聞くけれど、今の状況がまさにそれなのかもしれない。
自分とはどのような存在なのか。それを考える時に大切なのは自分ばかりではなく他人の事もよく観察する事。という事で、この日記では先生のことを語ることが多いけれど、あねさんについても少々語っていこう。
どうやら今日も刺激的な1日になる模様…。
→他の日の四国歩き遍路日記はこちらにまとまっています、合わせてどうぞ。
※復刻にあたり、旅先で沢山写真を撮ったものをアップすることにしました。Facebookの方へ高画質のアルバムを作りましたのでよろしければ御覧くださいませ。
光差しこむ徳島県
久しぶりの晴れである。雨の音で起こされず、ついウトウトしてしまった。まずい。完全に寝坊だ。布団から跳ね起きるとすでにあねさんはおらず、先生がご飯の準備をしていた。なんてこったい。やっちまった。
なにか手伝おうと思ったけれど、座って待っていたらいいとの事なので、先生がテキパキと準備する姿をみてお茶をすする。…が、どうにもこういう時間は苦手だ。
人が働いているのに、自分が休んだりしていると、なんとなく申し訳ない気分になってしまう。まぁ、こういう性格が先生の言う所の気を使いすぎているって所なんだろう。病み上がりという事でじっとしておこう。
お腹の調子は元に戻ったみたいだ。しかし、お腹の調子を心配してくれて、長芋の出汁ご飯を作ってくれた。
うーむ。やはりこれは美味い。いくらでもイケてしまう…。僕はおかわりをしないように、ゆっくりゆっくり満腹中枢を刺激するように食べる。
密かに僕が好きだからという理由で、豆腐一丁が付いているのは嬉しい所。豆腐一丁まるまるなんて、無骨だけれど、食べればそこに優しい味。
ふう。ご飯を食べ終え、少し晴れた空の下、朝の散歩をする。池の鯉達は今日も元気に泳いでいた。太陽はひんやりした空気をじわじわと温めてくれている。太陽が出ていると気分も高揚してくる。
太陽はエネルギーの源だなぁ。なんて事をこの旅に出てから度々思う。旅で度々。…いや、ホント。太陽は元気をくれる。
最近のブログ事情
ここ数日、天候がずっと怪しい日が続いたので、干し物系の製造が滞っていた。久しぶりにお日様が顔を出したので、先生は商品を仕上げる仕事に入った。
僕は特に手伝えることがなさそうだったので、自分のブログを書く時間をもらった。…だいぶ溜まっている。
ブロガーの人の7割ぐらいは自分の事を遅筆だと言うらしいが、僕もご多分に漏れず遅筆だ。
…いや、正しくは、「長文すぎて時間がかかる」のだ。書くスピードはなかなか速いものだとは思うが、書けば書くほど書きたい内容が出てきてしまう。
そして結果的に長文になったものを、推敲して短くしていくのだが、ここが問題。
この文章大丈夫かな?このリズム気持ち悪くないかな?なんて感じで実際に書いた文章を口に出して、パズルのように順序を変えたりして、最後の更新ボタンを押す前に何回も見直す。
何回も何回も見直す。
心配性で仕方がない。誰かが不快にならないだろうか。何か間違っていないだろうか。なんて事が頭の中を満たしてしまい、なかなか更新ボタンを押せない。
その結果、10年で100記事しか書かなかった男が、この旅の中では、毎日の出来事を毎日更新しようっていうんだから、光の速さのごとく指と頭を動かさねばならない。そしてある程度の覚悟を持って更新ボタンを押さねばならない。
そうじゃなければ毎日更新なんて難しいのです。しかしまぁ、端末がスマホって所にもこの頃不便さを感じてきた。
昔、チャリの旅に出た時はノートパソコンとポケットWifiを持って行って駅のホームとかで書いたのだけれど、今回は徒歩だ。
ノートパソコンなんて持ってしまったら、かさばるし、重くて仕方がない(↑は香川の金蔵寺駅って所で書いた時の写真。ここじゃないとWifiが入らなかった)。
だから諦めてスマホで記事を書いているのだけれど、パソコンとスマホではやはり文字入力の効率が違う。ブロガーの人がスターバックスなどでノーパソのキーボードパチパチ、エンターキー、たーん!!ってやっているのもうなずける。
外なのだからスマホでええやんって思っていたが、どれだけ超高機能で軽量になってもスマホはスマホ。指一本しか使えない。だから指を十本使えるパソコンの入力スピードにはまだまだ追いつけないだろう。
と、話が脱線してしまったが、そのノートパソコンを諦めてスマホでブログ記事を書いているのだけれど、ひとつ問題がある。
僕が泊まらせてもらっている部屋は電波がすこぶる悪いのだ。「1x」という表示になる事もしばしばだ。そんな表示があるなんて初めて知ったよ。4G、3Gなら聞いた事あったけど。
という事で、先生達と夜遅くまで話をして、寝床に戻ってから記事を書くのだけれど、その書いたものはその時に更新が出来ないのだ。
次の日の昼間にでも下書き保存しておいたものを電波の良いところを探して公開していく。それが最近のこのブログ日記の更新環境である。
電波の良いところ。なんだか気分はポケモンGo。モンスターを探すが如く、電波を探す。電波ポケモン・バリサンダー。そのバリ3の生息地はと言うと、ご飯を食べる部屋のフライパンがかけてある壁らへんである事が最近わかった。流石だぜ、フライパン!
ある程度まとめた数日の記事の更新ボタンを押し、スマホをフライパンの上に放置。なんとか電波が僕のブログを飛ばしてくれている間、あねさんのパソコンを使ってネットショップの製作に取り掛かる事にした。
だが、しかし。
ネットショップなんて作った事ないんだ。実は…
ここに泊まらせてもらうお礼として、ブログとネットショップを作る事を決心した。ブログは先日完成した。次はネットショップにとりかかるわけなのだが。
ぶっちゃけネットショップなんて本格的なものは作った事がないのよね。1つの商品をメールで注文を受け、クレジットカードで決済するぐらいな簡単なものは作った事があるのだが。
ここのお店は商品の数が多いのでショッピングカート機能を導入せねばならない。しかも、お客さんよりも何よりもまず、先生とあねさんが簡単に新しい商品を登録出来るシステムでなければならないのだ。
僕が使うわけではないから。とにかく、とにかーく簡単でなければならない。
実は先生の所では過去に一度ネットショップの世界にチャレンジしてみた事があるらしい。話に聞く所ではあるが、昔、先生の所にサイトを作ってくれる会社がセールスに来たことがあったらしい。
その謳い文句を聞いて導入してみたのだが、契約してからのその会社の対応に困ってしまった。
説明が下手くそで何を言っているかわからないわ、追加で商品を登録するのに、さらにお金がかかるわ、全く自由が効かず、途中で辞めてしまったらしい。
そういう経験もあるから、インターネットアレルギーがあるのだろう。
ちゃんと使えば便利なんだけどな〜。誰でもわかりやすく簡単な物で自由が効くネットショップ。それを運営出来るサイトにしなければならぬ。
うーむ。なかなか頭を使うもんだな。ま、でも今の世の中、調べたら大抵の事は出来るし。とりあえず、もうちょいリサーチしてみよう。やれば出来る。
やった事がない事でも出来るようになるのが人間の面白い所だ。
「どんな偉人も最初はみんな初心者だった」
そんな言葉を誰かが言っていた気がするし、僕が言ったのかもしれないし、やるだけやってみよう。
ゆっくり食べる。ゆっくり、ゆっくり…
しばらくしてあねさんが帰ってきてお昼を作る。今日は何かの魚のフライだ。アジだと思ったけど、確認してない。とにかく美味しかった。
昨日の腹痛を思い出し、ゆっくり食べる。早く食べるから沢山食べてしまうのだ。
ご飯はお代わりしないように、左手でゆっくり食べる。そーいえばもう右手も左手も関係なくどちらでもスムーズに食べられるようになってしまった。なんだったら、本来の利き手である右手の方が使いづらい。
じゃあ、左手で食べてもゆっくり食べられるわけじゃないじゃないか。とにかく、あの時の痛みを忘れずに食べ過ぎには気をつけよう。
ゆっくりと食べよう。ゆっくり、ゆっくり。
午後の予定は…
ネットショップの方も行き詰まり、自分の記事の更新もある程度終わったので、気分転換がてら、二階の天日干しの場所へ向かった。
そこではあねさんが仕事をしていたので、何か手伝えますか?と聞く。
僕はビニール手袋をつけ、網の上に鳴門金時を並べていく。溜まっていた分だいぶ並べた。すべて並べ終えると、まるで小判が空に浮いているような感じがした。
ここの景色は圧巻である。前はその写真も載せていたのだけれど、お見せできないのが残念だ。目の前に広がる大自然。こんな景色が綺麗なところで干しいもが作られている。
鳴門金時を干しいもにする前の物をひとつ食べさせてもらったが、すごく甘い。これは美味い!この旨味が干すことによって、ギューっと凝縮するわけだから、美味くないはずがない。
僕はすべてを並べ終えた後、使った道具などを水洗いした。冷たい水でもこんなに景色が良いと、手の痛みも忘れてしまう。
冷たい手でゴシゴシとこびりついた汚れを洗っていると、干しいものその美味しそうな匂いにつられ、ヤマドリが食べに来たらしい。遠くの方であねさんがコラー!!と叫んでいるのが聞こえた。
風呂の話なのだが、なんか臭い…
洗い終えたでっかい釜を先生に渡すと、カマドにまだ燃え残っている火の上にかけて乾かした。おお!なんかエコな気がする。何でもかんでも活用出来るもんですな。
これで本日の仕事はおしまい。すべてを終えた自分の体から、なんとなーく、本当になんとなぁ〜くだが、プーンと汗の匂いがする。フローラル野口くんだ。
気が付いてみれば、お風呂に3日入っていないのであった。天気が悪かったり、時間が遅くなったりすると、お風呂が面倒になってくる。
お風呂は山の上にもあるのだが、そのお風呂のお湯を沸かすぐらいならお風呂はいらなくていいか!ってなる。
汚いって?
山は平地より涼しく汗をかかない。だから普通の人が3日風呂に入らないのとは事情が違うのだ。それにこう、山の綺麗な空気を吸っているわけだから、内側からキレイキレイなのだ。
それに山の上に籠もらない為に下山してお風呂屋さんに行ってリフレッシュする習慣を作っている。そのお風呂屋さんに雨の影響で行けなかったのだから、フローラルな芳しい野口くんが存在しているのも仕方がない事であろう。
…という事で、流石に今日は風呂に行きます。
鴨の湯でティッシュ箱のすごいやつ
鴨の湯もこれで4回目。前回は女湯と男湯が逆になっていたが、今回は元に戻っていた。僕はたまりにたまった体中の垢を入念に落とし、露天風呂でゆっくりと体を温めた。
ここのお風呂は規模的にはそれほど大きくはないとは思うのだが、露天風呂から見える景色が素晴らしい。目の前にそびえ立つ山。そこにふわふわとした雲が漂い、夕焼けのオレンジに染まる。
鴨の湯近くの写真は結構撮っていると思うのだけれど、今日は時間帯的に良い感じの黄昏度合いだったので、アルバムの方にあげることにしよう。
じっくりと体を温めたとは思うのだが、お風呂からあがるとなぜだか鼻がすごく出た。先生より先に出た僕は、鼻をすすりながら車に向かう。
車の中にはすでにあねさんが戻っていたので、僕は自分の鼻水に耐えかねて、早々にティッシュありますか?と聞いた。
すると、あねさんは、ドヤ顔で僕の目の前を指で示す。
目の前にあったーーー!!!助手席の頭の所に何かでティッシュ箱がくくりつけてあった。もう1ヶ月近くこの車に乗っているけれど、全然気がつかなかったー!
と、ガーっとあねさんがテンションを上げてきた。
と僕もあわせてテンションを上げる。
全否定かよ!!(笑)
このティッシュ箱の取り付け方はええもんだけど、すごくはないアイディア。それなのだった。僕は目の前のティッシュ箱から数枚手に取り、チーンと長く鼻をかんだ。
ダイソーで偽ダッシュ事件
僕が鼻を数回かんでいると、先生が帰ってきたので、お風呂屋さんを後にする。あとはコンビニによって、山に帰るだけの予定だったが、あねさんが100円均一に行きたいのだそうだ。
先生は、ちゃっちゃと用事済まして来なさいと告げ、僕とともに車の中で待機。
あねさんがダイソーに行っている間、先生と僕はケータイの話をした。今まで先生は電話をするだけの操作しか覚えていなかったが、ブログをやる事になって、カメラなどの操作に興味を持ったらしい。
僕は先生のカメラの画素数がすごい事をお伝えした。最近買い替えたそれは確かに綺麗に写真を撮れる機種だった。しかし、初期設定のままだったので、能力を発揮していなかった。
なので、ちょこちょこっと設定を見直して、これでデジカメと同じぐらい綺麗な写真を撮れますよ的な事を話した。
しばらくすると、両手に買い物袋をぶら下げて、ノソ〜ノソ〜と歩いているあねさんが見えた。
あー。結構たくさん買ったんだな。とあねさんを眺めていると、あねさんは車の3mまで近づいた頃に、急にダッシュし始めた。
結論。あねさんを見ているとなかなかおもしろい。
3年かけて作った塩サバ
夕食は先日、専務が持ってきてくれた、塩サバを食べる。この塩サバは作るまでに3年かかったと専務が熱く語っていたのを思い出した。
3年。
…え?魚ってそんなに時間経っても腐らないの?と、率直に思った。
くさやってあるけど、あれは「くさ」いって意味であって、「くさ」っているというわけではなかろう。あれだって漬け込むのは20時間ぐらいなものだ。
僕はそんな感じで3年間かけても塩サバって腐らないんだなぁ、やっぱり塩ってすごいんだなぁ…と感心していると、この味付けに3年研究しただけで、3年漬けたわけではないらしい。
そりゃーそうだよな。サバを読むって言うぐらいサバは腐るまでが早い魚だもんな。そりゃー3年も持たないっての。ぼかぁ〜バカだなぁ。てへへ。
あ。知ってるかい?数をごまかしたりすることをサバを読むっていうけどさ、江戸時代の漁師さんは冷蔵庫なんてものを持っていなかったから、魚の保存が出来なかったのですよ。
それで魚の中でひときわ痛むのが早いサバは、その数を数えている時間ですらもったいないから、目分量でざっと計測して売りさばいたわけよ。それでまぁ、いわゆるいい加減な数字の事をサバを読むって言うようになったんだね。
…という話を教えてもらって僕は痛く感心した。なるほど勉強になります。
これ、本当にウマー!サバがこんなに美味いとは。専務の執念恐るべし。聞く所によると、みながよく知っているとある会社の社長の奥さんもこの塩サバのファンなのだそうだ。
ま、これは蛇足だけど、その人もお遍路やっているんだってさ。会社の社長の奥さんであれば、もう何でもかんでも手に入るだろうし、何不自由ない暮らしを送れるとは思うのだが、どんな人でも悩みはあるのだ。
そう考えると、「悩み」ってのも平等なんだな。悩みに大きいも小さいも関係ない。人は日々悩みをどうにかしようと一生懸命生きているのだ。僕はよくよく、悩みを大きい小さいで考えてしまう。
比較して悩み事を捉えてしまう。すると小さい事で悩んでいる事にむしょうに腹が立ってきてしまうのだ。しかし、まぁ、悩みは平等だという事を知っていれば、これからは少しだけ心穏やかになれるかもしれない。
誰も彼も悩みから抜け出したくて必死だ。大切なのはその大小ではなく、有無だ。悩みがなく生きていける。それが一番大事なのだ。
負けないこと 投げ出さないこと 逃げ出さないこと 信じ抜くことダメになりそうなとき それが一番大事
なのだ。
結局どれが一番なのかなんて、関係ないのだ。悩みが1つ増えちゃうからね。考えないことにしよう。
四国歩き遍路日記28日目まとめ
あねさんが雪塩というのを作っていた。これを明日使うんだそうだ。
布団に潜っている時、専務の言葉を思い出した。
「矛盾していない人間はいない」
なんとなく僕の頭は悟りを開いたような感じになり、グルグル巡る。
グルグルグルグル、眠れなくなる。なんか閃いた。閃きとともに意識が遠のき、僕は眠りに就くのだった。
そんな『四国歩き遍路日記28日目』でした。