四国歩き遍路日記29日目。この旅の記録は以前旅をしながら公開していた日記を諸事情によりお蔵入りしまったものを再編集して公開したものです。
28日目を書いてからだいぶ間が空いてしまった気がしますが、その間に映画のブログを書いたり、ここのブログの新しい記事を書いたりと、少しずつまっさらな状態の記事を書くようになりました。
その点、この記事は昔に書いたものを下書きに書き直しているので、産みの苦しみみたいなものはなく、楽しく書かせてもらっています。
前にこれを旅先で書いていた時は、頭を抱えて、うーんうーん何を書いたらいいんだ、何を書いたらいけないんだ。なんて悩みながら書いたものです。
その文章を数年後の僕が読んでみると、昔の自分からの手紙のようで少し不思議な気分になります。まぁ、この記事を読むのが初めての場合は、どれが書き直した部分でどれが旅先の文章なのか、探しながら読んでみるのも楽しいと思います。
ちょっとしたクイズ感覚でね。ま、答え合わせはないんですけどね。…ということで、今日は所々でクイズを出されたという話を書いていきます。
ではでは、再編集版よろしくどうぞ。
四国歩き遍路日記29日目のまえがき
興奮して夜も眠れず、頭の中がぐるぐる回る。ここでの生活は新しい発見と、昔の出来事の理解を深める。どうしてあの時あんなことになったのか。どうしてあれは上手くいかなかったのか。
人との関わりの中でなんとなくでも解かれていく、かたーい結び目。人の命とは何なのかを考える日々。人と関わることはどういうことなのかを考える日々。そして今日も一日が始まったわけだけれど…
→他の日の四国歩き遍路日記はこちらにまとまっています、合わせてどうぞ。
※復刻にあたり、旅先で沢山写真を撮ったものをアップすることにしました。Facebookの方へ高画質のアルバムを作りましたのでよろしければ御覧くださいませ。
歩き遍路29日目、悟りの扉がバタンと閉じる
今日は快晴だ!綺麗にすっきり晴れた空。昨日の悟りを開いたものが、朝起きるとすっきり忘れてしまう。
開いた扉がバタンと閉じる。
コレはダメだと、洗濯をする。この渦を見ていれば何か思い出すかもしれない。グルグルグルグル。
うーむ。なんだったっけなぁ。世界は矛盾に満ちている。こだわりが争いを生み出す。的なことだったんだけどなぁ。もしかしたら夜中特有のちょっとばかり中二病なあれかもしれないけど。
夜に書いた手紙を朝読み返してみると両手で顔を覆いたくなるような事ってあるよね。あれはなんでなんだろう。あの現象に名前って付いているんだろうか。
まぁ、いいか。矛盾していない人間はいない。朝の自分と夜の自分。どちらも自分。朝の自分が忘れているという事は、もしかしたらそれほど大切な事じゃなかったのかもしれない。
あー、でもやっぱり思いついた事は、すぐにその場でメモをとらないと駄目だね。ボイスメモでもなんでもいいからサクッと形に残す習慣を身に着けなければ…。
エベレストの雪塩と悟り…
今日の朝ごはんは、卵焼き、レタス巻き、大根おろしと味噌汁。そして海苔。この海苔に…
エベレストで採れたという岩塩をグツグツやって作った雪塩をのっけて食べた。この塩は口に入れた瞬間に消える。粉雪のような塩。
朝ごはんを食べながら、僕は昨日の悟りで眠れなかった話を先生にした。
そして僕は思い出す。
この世は矛盾で満ち溢れているからこそ、人は悩み、矛盾であるからこそ、人は救われる。
人との違いで悩み、人と違うことで救われる。人は常に1対1。それでいいのだの境地。
徳島に来て色んな人に出会ったけど、みんな人それぞれ。時には社会に属せない事に悩む。時には社会に属していても悩む。
こだわりを持っているからこそ、人とぶつかり、こだわりを持っているからこそ、前に進める。相手も人。自分も人。
違っていいのだ。矛盾していいのだ。矛盾していない人間なんて1人もいない。
ここに書いていても上手く説明出来ていないけれど、この事に気が付いて頭がすっきりしたような気がした。僕はこれから、ちゃんと生きていける。
うん。それでいいのだ。
人と話す事が引き金になって思い出すことってあるよね。だからこそ、人は一人で生きるより、たくさんの人と関わって生きた方が面白いのかもしれない。
溜まり溜まった干し芋製作をガーッと
ここ最近天候が悪く、干し芋の製作が滞っていたので、今日は集中的に干し芋を作る。僕も干し芋の製作の工程を全て体験したので手伝いに入る。
干した鳴門金時をまとめて、作業部屋に持っていき、ひとつひとつ丁寧に袋に詰めていく。この詰める作業もバランスよく詰める事が出来るようになってきた。やっぱり見栄えって大切だからね。
そして見栄えとともに、お店に並べやすいように大きさを揃える。そんな事考えた事なかったけれど、物にはいろいろと人の想いが詰まっているのだなぁ。
そう考えながら詰め終えた芋の袋を今度は口を閉じるために真空状態でプレスする。
よし、ひとまず完成。3箱分の鳴門金時の干し芋が出来た!
作業している時に、窓の方を眺めると、あいつが出現した。ジブリに出てきそうなやつ。こいつが部屋をトントン叩く。なんでこんなに足が長いんだ!!
先生とあねさんと僕で、この虫について話しながら干し芋を作っています。
昼飯はラーメン!
ホルモンのような肉とニラがすご〜くいい感じで美味しい。
ほれ。うまそうっしょ?
ニラもたっぷり!!徳島のラーメン、本当に美味しい。他の県のラーメンと違うスープなのだ。どこでも食べた事がないラーメン。
なんで徳島ラーメンってあんまり有名じゃないんだろう…。こんなに旨いのに。考えてみれば瀬戸内海の近くなのだし、ダシとかすごくとれて美味しいスープなのは当然なのだ。
徳島に来たらぜひラーメンを!
晴れた日だからソーラー充電!
そういえば、最近ちょっと困った事になった。ケータイやらデジカメやらを充電する為のACタップっての?コンセントに挿してUSB充電出来るやつが壊れてしまったのだ。
Anker PowerPort 4 (40W 4ポート USB急速充電器) 【急速充電 / iPhone&Android対応 / 折畳式プラグ搭載】(ホワイト)
Ankerのこれね。普通充電中は、このライトの部分がピカーッと光ったままになるんだけど、ふわっと付いては消え、ふわっと付いては消えを繰り返してしまう。
iPhoneもポンって鳴きながら充電中になったらすぐに充電解除されてしまい、またもやポンと鳴く。
iPhoneでこのブログを書いている僕としては、充電が出来ないのは死活問題だ。…が、しかし僕にはまだあれがある。そうハンガリー人のお坊さん、クリスに、
「ソーラーパワーマン!」
と言わしめたソーラーパネルだ。
ここに来てからずっとコンセントで充電出来ていたから、リュックの奥の方にしまってあったんだけど、空も晴れたことだし、これはソーラーパワーマンの出番だなという事で、昼食後に屋根の上に載せてモバイルバッテリーに蓄電開始!
備えあればなんとやらってやつだね。
イノシシの罠をトラックに乗せる
さて。充電問題はなんとかなりそうなので、先生の手伝いをすることにした。僕は指示を受け、山にあるとある小屋の前で待った。ここには一体いくつの家があるんだろう。それもほとんどが手作りだってのが驚く。
僕が今いる小屋は格別素晴らしい出来の小屋で、扉がゴージャスだ。どこぞやの世田谷区のお宅にお邪魔しに来たような感覚にもなる。
そのゴージャスな小屋の前で待っていると、先生はその小屋の横にあった大きな大きな柵を指さした。な、なんだこれは!?
どうやらそれはイノシシの罠のよう。
先生は殺生をもう辞めたとの事で、今まで使っていた罠を人に譲るのだそうだ。重そうな檻。いや、重そうっていうか重い。すこぶる重い。
2人でなんとか軽トラックに乗せる。もう!!なんじゃこりゃー!!重い!重すぎる!!
この重さでなくてはイノシシの力で倒されてしまうのだそうだ。イノシシ強い。イノシシさん、パねーっす。
罠とか、漫画の世界でしか見たことなかったが、またもやいい経験になった。
檻の中には自然の木がポローンとぶら下がっている。僕は長いこと放置して木が生えてきたのかと思っていたが、それに餌をつけて罠を張るんだって。
イノシシが走る姿すら見たことなかった僕。一体今までの人生はなんだったのか。もし地震などで家が崩壊したとして、サバイバル生活をしなければならなくなったら、生き延びる自信は全くない。
明日、小屋にお蕎麦を食べに来る人がいるというので…
僕が泊めさせていただいている母屋は以前、お食事処をやっていた時の食事場所だ。もうお店は閉じてしまったらしいが、明日は知人にそばを振る舞うらしい。
なので、母屋を開けなければならない。僕は約1ヶ月振りにリュックを背負い、部屋を移動した。
お、重い…。こんなに重かったっけ?ってか、イノシシの罠といい、僕の体はなまりきっているなぁ…。遍路再開の時は大変だ。
あねさんが部屋を片付けてくれたのだが、もんのすごーーーーーく広くなった。同じ部屋とは思えないほどだ。しかしこれだけ広かったとは、部屋とはやはりそこに置いてある物で決まるのだな。
こうして見渡してみると、ここで食べ物屋をやっていたのも納得だ。さぞかし賑わっていたことだろう。自分の知らない過去に少しだけ嫉妬する。僕はその場所にいない。
結構長いことここにお世話になっているけれど、僕が知っている事なんてほんの少しの事なのだな。人と関わると、時折こういう淋しい気持ちに襲われる。まぁ、これは僕の悪い癖だな。
さ。出かける準備をしよう。
あねさんを残し、先生と僕は出発
あねさんは明日の準備があるというので、小屋に残り作業するのだそうだ。
先生と僕は檻を届けに山を降りる。山の紅葉が始まっている。どうやら気持ちが沈んでくるのはこの季節柄のようだ。
これが、秋晴れというものか。遠くの方に淡路島と沼島がうっすら見える。
いつもは通らない道をドライブしているので、写真をパシャッとする回数が増える。美しい町だな、本当に。
先生が檻を渡す人の家に着くとそこにはイノシシの足跡があった。ここのおっちゃんはここいらで1番イノシシ取りが上手なんだそうだ。
イノシシ取ったら肉食べさせてやるけん、とニッコリと笑っていた。イノシシ食べたことないからすごく楽しみだ。それにしても先生の知り合いの人はみんな話しやすい人ばっかりだな。
人見知りの僕も顔が引きつる事なく話すことが出来る。
…しかし、それにしても先生は僕を人に紹介する時に、様々な職業を言って楽しんでいる。前は山に来て山の上の生活を研究している大学生として紹介されたし、今日は小説家として紹介された(笑)
僕はそれをドギマギしながら装うのだけれど、いろいろな自分になれる気がして面白い。実際、人からみたら僕なんてどこぞやの知らん馬の骨なわけだし、そういう特定の職業を教えてもらった方が安心できるのだろう。
小説家かぁ。
本当になれるんだったらいいなぁ〜。芥川龍之介みたいな作家になりたい。
先生の実家でハロウィン
檻を渡した後、先生の実家に行く。家に行くと沢山のお菓子が広げてあった。
そうか、今日はハロウィンなんだな。
先生の末っ子の息子さんがご飯を食べに来がてら、沢山のお菓子をお孫さんにあげてた。
お孫さんは美味しそうにラムネをボリボリ食べてた。時折、「これ何に見える?」とラムネをかじって作ったなにかを見せてくれる。
わ、わからん。このラムネはなんだ?何に見えたら正解なのだ?
「ボール!」
…。
ん?
ぼ、ボール…かぁ。見えなくもない。でも何に見える?と聞かれた時に思い浮かばなかった。うーん。頭をもっとシンプルにせねば。難しく考えすぎた。
これ、折り紙大好きな2番目のお孫さんが見せてくれた。前回よりもまた増えている…(笑)
折り紙を折って、学校の友達に配っているんだって。この次男くんはとにかくずっと折り紙を折り続ける。すごい才能だ。
そーいえば、今日は昼間から鼻水が止まらない。花粉症だろうか。マスクをして登場すると、アレルギーの薬をくれた。
飲んで少しするとピタッと止まる。おお。助かる。
そば米汁って知ってる?
今日の夕飯はこれ。シャケのホイル焼きがニンニク効いていて美味しい!…しかし、そこで気になる1つの汁。右のやつね。
これはなんだ。汁の中に所々つぶつぶが入っている。味噌の麹だろうか?
うーむ。
気になったので聞いてみると、「そば米」というものなのだそうだ。
これ関東の人知らないのよね?
…僕だけ?
さすが、なんでも売っているAmazonさん。Amazonのサイトを探してみると同じ袋の商品が見つかった。
三角形のお米のような。どうやら徳島ではそば米汁というのを食べるらしい。そばを食べる時は必ずと言っていいほどそば米汁がセットになる。
全く知らなかった食文化。同じ日本なのに、この違いはなんなんだろう。面白いもんだ。
奥さんからクイズ
そーいえば、玄関にもじゃもじゃした木が飾ってあった。好奇心旺盛というわけではないけれど、どうにもこうにも目に入る物すべてがあまり馴染みのないものばかりでやっぱり知りたくなってしまう。
先生の奥さんは華道をやっているのだけれど、この花は何の花かと聞いたら、
「何の花でしょう?」
と、クイズを返され焦った。見てすぐに綿かな?と思ったが、改めてクイズとして出されると、うーむ。と考えてしまう。
わ、綿っすか?
「よく知ってるじゃない」とにっこり笑ってくれた。これが綿の木かー。ん?あれ?綿って羊じゃないの?あれ?あれはウールか!あれ?蚕が作るのは?あれは繭か!
なんだか頭の中がぐるぐるぐるぐる。普段何気なく目の前に存在している物の原材料の時の姿を見ると不思議な感覚に襲われる。綿の木って存在しているんだなぁ。覚えておこう。
お孫さんのラムネクイズもそうだったけど、難しく考えない。シンプルに考えるということを忘れてしまっている。シンプルだってそれでいいのだ。
鴨の湯でほぼ貸切。遅い時間だと…
先生のご実家を後にし鴨の湯へ向かう。ここのお風呂屋さんは5回目。
来る時間帯によって混み具合が違う。今日は遅めの時間帯なので、ほとんどお客さんがいない。
ここの露天風呂で独り、空に浮かぶ月を眺めてゆっくりと疲れを取る。贅沢な時間だ。
ほら。ロッカーもいつもは人でごった返しているのに誰もいない。
夜の風呂は格別だ。いつもは夕方ぐらいに来るんだけど、夜の方がオススメだな。遅くまでやっているから来るなら20時~21時ぐらいがいいと思うよ!
四国歩き遍路日記29日目まとめ
小屋に戻ると、先生が何やらバカでかい鉄板を出してきた。写真で見せられないのが残念ではあるが、それはそれはバカでかい鉄板だ。よくお好み焼き屋とかでお店の人が使っていそうなサイズの鉄板あるでしょ?あのサイズの鉄板。
それが今、目の前にあるのだ。
ビックリする僕に、イベントで焼きそばを焼くための鉄板だと説明してくれた。
うーむ。本当に何でもあるのだな。文字通りの何でも屋が出来そうだ。
屋台でありそうなものを聞いてみたが、唯一わたあめを作る機械はないそうだった。
綿あめって縁日で売ってること多いけど、あのキャラクターなどが書かれている袋ってどこで売っているんだろ。著作権とかどうなんだろ。…って子供の時に考えてたので質問しようと思ったけど、綿あめの機械がないようなので、辞めておいた。
なんでも知ろうとするのは時に良くない事になるからなぁ。それをこの旅でも学んだ。うん。
人には踏み入れて欲しくない領域があるものだ。その距離感を取りながら接するのもすごく重要だ。なんでもかんでも100パーセントでぶつかるのが誠意ではない。
小腹が空いた僕は、ストーブの上で焼いた食パンをひとかじり。
う、ウマっ!なにこの食パン。
美味しいものは美味しい。難しい事を考え始めた時は、うまいものを食べるに限る。
そんな四国歩き遍路日記29日目。