四国歩き遍路日記30日目。この旅の記録は以前旅をしながら公開していた日記を諸事情によりお蔵入りしまったものを再編集して公開したものです。
今日から日付は11月の出来事に入ります。同じ場所に30日ほどもいれば日々の出来事にも慣れてきそうな気もしますが、ここは全くの別世界。
感じる事、体験することがほぼ毎日新しい出来事ばかりです。こりゃー、家にこもってGoogle Earthなどの旅ではわからないことです。肌で感じるってまさにその通り。
そりゃー蕎麦も打つし、イノシシも横に飛ぶっての!
何度も飛び散る、僕の悲鳴!!
それでは、再編集版よろしくどうぞ。
四国歩き遍路日記30日目のまえがき
今日は人生初のそば打ちだ!そば!蕎麦!ソバババーン!
今日でちょうど30日。歩いた日にちはほとんどないけれど、最初の頃の自分と比べてかなり心が軽くなった模様。考えもまとまってきた気がするし、旅に出たことをしみじみ考える一日。
イノシシの話もちょこっとあります。
→他の日の四国歩き遍路日記はこちらにまとまっています、合わせてどうぞ。
※復刻にあたり、旅先で沢山写真を撮ったものをアップすることにしました。Facebookの方へ高画質のアルバムを作りましたのでよろしければ御覧くださいませ。
雨ニモマケズ
朝起きると、ここはどこだ!?とわからなくなる。そうだ。昨日、引越しをしたのだった。壁をみると宮沢賢治の『雨ニモマケズ』の詩が飾ってあった。僕はこの詩が昔から好きだ。
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ
という所が特にいい。褒められなくとも、苦にもされないデクノボー。まさに僕の理想とする人間だ。デクノボーというのに共感を覚える。ひと目を気にし、嫌われないように嫌われないように、褒められる事だけを考えて生きてきたけど、疲れてしまった。
ひと目などどうでもいいのだ。役に立たないデクノボー。それでいいじゃないか。先生の所で、この詩を見たのもなんかの縁だ。僕は雨や風には負けない。
そんな事を考えながら起き上がる。
天気は快晴。
昨日まで寝ていた部屋を通り抜けるとそこはもう別の部屋のようだった。完璧にお店だった頃の雰囲気を取り戻している。あねさんの仕事、さすがやー。
太くて柔らかい堀川ごぼう
部屋の様子を見た後は、朝ごはんを食べに食卓の部屋へ移動する。今日のご飯はスクランブルエッグと、生ハムサラダに味噌汁、そしてごぼうの煮物。
もう一度言おう。そして、『ごぼうの煮物』。
写真でわかるかな?
なんだか、ごぼうのサイズがおかしいのだ。僕の知っているごぼうに比べてずいぶんと太い。ふと、“デクノボーのゴボー”というフレーズが浮かんでくる。Say Hoo!!DekunoBoo!!Goboo!!ちぇけらー!
ふう。韻を踏んでしまった。途端に頭がサタデー・ナイト。Yeah。
…あ、うん。
このごぼうは“堀川ごぼう”と言うのだそうだ。太くて柔らかい。伝統の京野菜に登録されているんだってさ!ごぼうを食べている気がしない!むちゃくちゃ柔らかく、ごぼうの繊維を感じない!
これは下仁田ネギを初めて見た時の衝撃によく似てる。面白い食べ物が世の中にはあるものなんだな。見つけたら食べてみて欲しい。Amazonには売ってなかったけど、旬は11月〜1月なんだそうだ。まさに今って事だね。
ごぼうってあんまり興味がなかったけど、こんなに美味しかったなんて。さすがっす、堀川ごぼう。
大きな勘違いと先生の優しさ
そう言えば、このごぼうを食べている時に、部屋の所に雨ニモマケズの詩が飾ってあるんですね!好きなんですか!?と先生に聞くと、その額縁の存在自体を知らなかった。
ここに来た事がある人がきっと飾っていったのだろうとの事。
そうだった。先生はあまり文学には触れていないのだった。
「ここには色々な人が来た事があるけれど、君のような文学少年は珍しい。ワシはほとんど文学には触れてこんかったし、ここに来た人にもあまりいないな」
そんな事を言っていたのを思い出した。僕は先生との会話の中でちょこちょこ文学作品の話を持ち出すのだけれど、先生はそれを面白そうに聞いてくれる。
ただ、僕は時折知ったかぶりをしてしまうことがある。
あねさんが先生の顔を写真で撮っていた時のことだ。先生は正面から撮られるのを嫌い、横を向いていた。
まるで森鴎外のようですね!!
僕は自信満々にそう言った。先生は「どういう事?」と聞き返してきたので、森鴎外は正面から写真を撮られるの嫌っていたんですよーと豆知識を披露する。
先生が医者だった事もあり、軍医だった森鴎外に共通点があると思ったのだ。
しかし、僕の頭の中では、あれ?森鴎外って正面から撮られた写真があったような…と頭の中で気が付きはじめていた。
そして先生はこう言った。
「そういえば、正岡子規も写真撮られるの嫌っていて横をむいていたなぁ」
あ!!
そうだ。正岡子規だ!森鴎外じゃなかった!
僕は自分の間違いに気がついたが、一度大見得を切って言ってしまった手前、引くに引けなかった。森鴎外もそうなんですよーと言い通した。
先生はそれを咎めもせず、
「昔の人はみんな写真が嫌いなんだなぁ。魂を抜かれるって信じていたようだしのう」
と話をそらしてくれた。
きっと、僕の間違いには気がついていただろうが、こういう所が先生の優しさなのだ。
僕は自分の性格を反省した。間違いを間違いだと認められる人間になりたい。そして人の間違いを間違いだと指摘しない大きな人間になりたい。そう思う。
今日は先生の知り合いが来るので…
さてさて、昨日も書いた通り、今日は先生の知人が遊びに来る。それで昨日からあねさんがせっせと部屋を掃除したりしてくれたり、僕も寝床を変更したりしていたわけだ。
完璧に仕上がった部屋。これで準備オッケー!と言いたい所だが、今日は晴れにもかかわらず少し寒い。なので別の部屋に置いてあったストーブを持ってきた。
そのストーブには灯油が入っていなかったので、僕は灯油を入れる仕事をつかまつる。御意!
僕がいつも洗濯させてもらっている洗濯機の横に灯油があるという事を聞き、ひょいひょいっとタンクを持って、そちらの方へ出向いたのだが、どうにもこうにも『あれ』が見当たらない。
いつもの『あれ』。
そう。灯油といえば、赤いポンプよね?
これね。頭の部分をキュッと閉めるとなんの原理か自動でゴボボボボっと灯油タンクに入っていくやつ。サイホンの原理って言うらしいんだが、未だに僕はあの現象が不思議でならない。
でもその赤いポンプがどこにもない。その代わりに見つけたこれ。
工進(KOSHIN) 乾電池式 タンク 直付け 灯油ポンプ EP-503F 自動停止 手元 スイッチ 単三電池 4本 使用 灯油 ストーブ 給油
…なんというハイテクな。これ、ボタンひとつでウィーーーンって灯油を入れてくれるし、満タンになったらピーピーって勝手に停止するんだぜ!
よく見る赤いポンプしか知らなかったから、感心してしまった。世の中はどんどん便利になっていく。先生の奥さんがこういうの好きらしくて発見して買ってきたんだってさ。
灯油をセットし、調理場に戻る。そこにはせっせと動くあねさんの姿があった。
人生初のそば打ち体験!
突然ですが、これからそば打ちに入ります!あねさんはすでにお膳の準備を整え、あとはそこに盛り付けるだけの状態を作り出していた。なので、これからはそば打ちに専念するとのこと。
僕はその後ろについていく。自分で食べる分の蕎麦を打たせてもらえることになったのだ。
ぬははは!お遍路出てそば打ち出来るなんて思っても見なかったよ。四国は蕎麦というよりうどんのイメージだったしさ。なんという不思議な日々。常に自分の想像の遥か上を超えて行く日常。楽しいです!!
あ、今日の文章にそばって書いたり蕎麦って書いたりしているけど、意図的なのでお気になさらず。文章中にそばって書くと文字が立たない時があるのでその時は蕎麦って書きます。
漢字はひらがなの中で目立つからね!!
では、そば打ちを実践!!言われた通りに量ります。そば粉と、つなぎをそれぞれ言われた分量測ります。そば粉というのはなかなか白いものなのだなと思ったのを覚えている。
まさか、この感覚がのちのちに事件を起こすなんて思ってもみなかった…。
ま、それはまた後の話なので、まずはそば打ちの話を進める事にしよう。
水を入れます!そば打ちもそうだけど、ほとんどの料理ってこの分量が大切よね。
料理が上手な人は感覚でささっと出来てしまうけれど、僕のような素人は言われた通り、レシピに書いてある通りの分量を守ることが失敗しないただ唯一の方法なのです!
なので、お水もちゃんと計量カップを使って測りました。
準備は万端!!
それでは、水を注ぎ込んでこねます。いよいよそば打ちを始めたって感じ!
こう、円を描くようにササッとササッと一つにまとめていきます。
…が、なかなかまとまりません。
それでもめげずにコネコネしているとなんとかまとまってきました。ここまで相当の時間がかかっております!!
あねさんも不思議そうに頭をかしげておりました。
ふう。なんとか丸になりました。もうすでにここらへんで心は折れております。そば打ち、むずー!!なんでこんなにまとまらないのだ。あれかな、寒いからかな。
でも、寒いと固まるイメージがあるんだがの。ほら、粘土とかって寒いとカチンコチンになるじゃないですか。あんなイメージなのだけれど、なんかこの蕎麦というやつはなかなかに思い通りになってくれません。
昔うどんを作った事があるんだけど、あの時は小麦粉に水を入れた途端にまとまったのだよ。やっぱり蕎麦は打つのが難しいってのはここらへんの違いがあるのかしら?
むずー。
なんとかかんとか、丸まった蕎麦をこの打ち粉たっぷりの作業場で伸ばしていきます。こういう場所が普通にあるっていうのが、この山の不思議なところだ。
もしかしたら、ここにないものを探すのは困難かもしれない。あ。ゲーム機とかはないか。でも生活に必要なものはほとんど揃っている。そして非日常に必要なものも揃っている。マジでなんでもある。
ないよね、普通。蕎麦打てる場所って。本当に不思議な場所にお泊り接待していただいているものだ。なんというか、アリスになった気分。ふしぎの国のアリス。
…あ。アリス大好きな人、すまん。僕がアリスだなんておこがましいよね!!じゃあ、アリっす。僕はふしぎの国のアリっす。ちょりーっす。
そんなアリさんがもじゃもじゃと手に毛深く生えている僕が丸めた蕎麦を平たく広げていきます!ま、僕が作ったやつは僕が食べるから大丈夫。
うーむ。考えてみたら、料理屋さんでは働けないなぁー。こんなもじゃもじゃな手じゃなぁ〜。あれなのかな。シェフでもきっと毛深い人っておるよね?そういう人ってやっぱり手の毛はそるのかな。
髪の毛ならコック帽ってあるけど、手の帽子ってないもんね。あ、ゴム手袋やビニール手袋ってのがあるか。
…なんてことを考えながら広げていきます!
まぁーるくまぁーるく。
ある程度やったら、今度は木の棒を使って伸ばしていきます。この木の棒、なんて名前なんだろ?伸ばし棒?いや、伸ばし棒は楽譜の中の長音符のことだわ。
麺棒。
そう。麺棒だ!
コロコロ。コロコロ。
伸ばしました!
ってか、これ作業しながら、iPhoneで写真撮っているから、iPhoneが粉まみれ!!iPhoneの三脚持ってきたら良かったな。それで声でシャッター切れたらいいのに。
僕の数少ないお友達、Siriちゃんは声でカメラは起動してくれるのに、シャッターまでは切ってくれないんだよなぁ〜。Hey Siri、カメラで撮って?って言ったんだけどカメラしか起動してくれない。
のちに調べてみると、声シャッターってアプリあるんだってさ。でも、標準でつけて欲しい機能だよね。意外と手が使えない場面って多いし。
という事で伸ばし終わりました。
さて、いよいよの時がやってきました!!
じゃーん!これで切っていきます。これがそば打ちの醍醐味よね!!
包丁を持ち上げると自動で左に動いていくシステム。
高く持ち上げると太麺。低く持ち上げると細麺。これがすごく難しい。
麺を2つ折りにしてセット。
タンタンタンタン…。
あれ…。
今度は、あねさんが先生の知り合いに出すそばを切る。タンタンタンタン…。…手も毛がなく綺麗だぜ。ふう。いいなぁ。手と毛。漢字が似ているのに、手に毛が生えているとこうまで不釣り合いになるっていうね。
まぁ、いいか。そんなことを考えている間にも、あねさんはリズミカルにタンタンタンタン、タンタンタンタン♪
その音はそれこそ楽譜に流れる音符のよう。軽やかステップ。
これが、僕が切ったやつ。
これがあねさんが切ったやつ。…完敗じゃ。
やはり熟練は違う。すごいっすねー!と言うと、
「すごくはないけん。全然すごくはない」と全力で否定される。全力で…。
先生の知り合い到着。そば茹でる。
さて、蕎麦の準備が出来たので、今度は茹でる時間です。僕は先生の元へ行き、蕎麦の準備が整いましたと言いにいった。
するとすでに先生は準備万端、カマドに火をつけ始めていた。大量のお湯が必要になるため、カマドを使うのだ。先生は、カマドに簡単に火をつける。後ろ姿が様になるぜ!
火がついた後は、僕に任せてくれた。先生が写真を撮ってくださる。うーむ。頼りなげな背中…。全然風格が出ない。この違いはなんだろう。
猫背なんだよなぁ、僕は。先生は胸を張っている。やっぱりそこらへんが違うのかな。自信がないし。
パタパタ。
パタパタ。
そんな感じで火が消えないように薪を足しながらうちわで扇いでいると、何やら遠くの方から来訪者の声が。ん?あれ?さっき、先生の知り合いは到着したよな?
そう思っていると、あねさんがでっかい箱を持って「届いたでー」と、言いに来た。
そーいえば、アレだ。先日ここの産業革命にと頼んでおいたモバイルプリンタが届いたのだった。
これね。写真じゃ伝わらないが、なかなかのいい感じのモバイルサイズ。助手席にサラリとおいて持ち運べる。
EPSON A4モバイルインクジェットプリンター PX-S05B ブラック 無線 スマートフォンプリント Wi-Fi Direct
Amazonでの評価は、まぁボチボチ。これで外回りの時の配送が楽になったらいいなぁ〜。
開封はまた後で。今はお客さんの到着で忙しいのです。
僕は持ち場に戻り、再びカマドの番をする。
番。
何を見張らないといけないのか?それはカマドから水蒸気が吹き出したかどうかだ。カマドが100度になると水蒸気が蓋の横から噴き出してくるのだそうだよ。
先生とカマドの番人を変わった時に、これ、もう噴き出してますか?と聞くと、「それは煙。水蒸気じゃない」と指摘されたのです。うふふ。むずー。
これでもか、これでもかー!!とうちわを扇ぐ。
「あおげあおげ」「あおぐぞあおぐぞ」
そんな台詞があった狂言を思い出した。小学校の頃に狂言を文化センター的なところに観に行ったのだけれど、あの頃は全く意味がわからなかった。
だけど、その台詞だけはやけに頭の中にコビリついている。
僕は気になり、iPhoneで検索してみた。狂言の演目名がわからず、あおげあおげあおぐぞあおぐぞって検索したら出てくるのな。Googleさん、すごー。
そうそう。『附子』って演目だった。猛毒だから絶対に開けちゃ駄目だぞ!って言われた壷。
駄目と言われたら見たくなるのが人の常。中身を猛毒なら、扇ぎながら蓋あけたらいいんじゃね?って言って開けてみたら黒砂糖だったってやつ。
「黒砂糖だとー!!なんや、ご主人、独り占めしおって!!食べてまえ!」
ご主人到着、黒砂糖全部ない。なんじゃこりゃー!!これはどういう事だ!!と怒ったところ、
「すみませぬ。ご主人が大事にしていたあの壷を割ってしまいました。これは死んで詫びなければならないと、猛毒である中身の附子を食べても食べても死ねずに困っておりまする〜」
ってさ。なかなか狂言も落語みたいで面白そうだ。あなたも興味がありましたら、ぜひ。日本の昔からある芸能って結構すごいと思うんだ。狂言とか歌舞伎とか。最近でいうと落語をiPhoneに入れて聴いてます。
お笑いやってた時は聴いてなかったんだけどね、父が落語好きでCDたくさんもってたから、お遍路中に聴こうと思って入れてきたのだ。
と、まぁ、そんなこんなで時間を過ごしているうちに目の前がすごい事になっていた。
どひゃー!!むっちゃ吹き出してる!!
蓋を取るとちゃんと沸騰しとる。これや!これが蒸気なんや!また一つ賢くなった。薪が燃えて出る煙とは全然違う水蒸気がモクモクと空へ消えていく。
釜でわかした湯を大きな鍋に移し、先生の調理開始。
先生はパラパラと鍋にそばを投入していく。慣れた手付きで匠(TaKuMi)を感じた。
茹で上がったようだ。これだけ大量の蕎麦を投入すると温度が下がるようで、再び沸騰するまで時間もかかったが、考えてみれば先生はタイマーなどを使っていなかった。
時折蕎麦の状態を見ては、箸を使って蕎麦を湯の中を踊らせていた。そしてこれだというタイミングで火を停めた。
うーむ。TaKuMi!!
引き上げる。あとはこれを盛り付けてそば完成!!ちなみに、これは僕の打った蕎麦を引き上げてくれている写真だ。写真をよく見ればわかるけど、だいぶぶつ切りな蕎麦になってる…。
先生はその蕎麦の不格好さをみて、笑ってた。
な、なんだこれは!?
そばが茹で上がったので、あねさんに盛り付けしてもらいに、蕎麦を持っていくと、そこには不思議な緑色のいがぐりがあった。な、なんだこれは!?
あねさんは菜箸でひとつ、その緑色のいがぐり、略してミドグリを掴み小さなお皿に盛り付けた。おお!!料亭のようだ。すごい、途端にミドグリに高級感が増した!
…が、僕には一体全体これが何なのか全くわからなかった。材料の想像すらつかない。Googleさん、これは一体なんて検索すれば出てきますか!?
僕はスマートフォンに見切りをつけ降参。素直にあねさんに聞くことにした。
どうやらこれはあねさんの創作料理らしい。鳴門金時に抹茶そうめんをつけて、揚げたものなんだって!イガグリに見立てた季節を感じさせる逸品!
前から思っていたけど、あねさんって料理むっちゃ上手いよな!見た目もさることながら、味も秀逸なんだぜ。いつものほほんとした姿しか見てないし、先生の手伝いをしている間に料理が完成しているので、その料理姿を見ていなかった。
それにこの天ぷら、衣が本当にサックサクで料亭で出てくるような天ぷらなのだ。
家で作る天ぷらってどうしてもふにゃふにゃになっちゃうじゃん?最近は天ぷら粉なんてものも出ているけれど、あれを使ってもどうしてもお店で出る天ぷらには負ける。
…が、どうだろう。あねさんの手にかかればご家庭でこんなに美味しい天ぷらが食べられてしまうのだ。すげえぜ、あねさん!!
と、まぁ、これを言葉に出してあねさんに言っても、「大したことない」と、全力で否定されるだけなので、このブログの中で称賛しておく事にしよう。本当に料理上手で見た目も味も素晴らしいっす。
あれよあれよと、先生の知人に振る舞う料理が出来上がっていく。あんまり高級蕎麦屋さんって言ったことないけど、おそらくそういうお店で食べたら4800円ぐらいしそうな蕎麦御膳。
僕の地元の『とんでん』という和食レストランで一番いいやつを頼んでもこんなにゴージャスなものは出てこないだろう。諸事情により完成した蕎麦御膳の写真を見せられないのが残念だ。
うん。撮り忘れたの。自分のお蕎麦でいっぱいいっぱいで。
…すまん。
僕は完成した御膳を緊張しながら、知人さんがたの元へ運んでいった。人見知り、つれー。手元はプルプル震えていた。落としませんように。失敗しませんように。
そのかわりと言ってはなんだが…
ふう。知人の方々がいただきますをするのを見届けたあとで、先生は僕に、「君も自分のお蕎麦を食べてきなさい」とおっしゃってくれたので、僕は部屋の奥の方に引っ込み、そこに用意してあったおそば御膳をいただくことにした。
じゃーん!これが僕が自分で打ち、食べた蕎麦だ!!
僕が打ったそば。団子になってたり、短かったりするよねー。
でも大事なのは味!見た目はいいの。だって僕が食べるのだもの。
そしてそばには当然、蕎麦米汁!
果たして人生ではじめて作った蕎麦の味は!?
…。
うぉおおおおおおおおおおお!!コシがあって美味い!
そして食べ過ぎた!美味しい!けど食べ過ぎた!!写真じゃ伝わらないが、この蕎麦、結構な量なのだ。それにね…
ミドグリを含めた天ぷらが美味すぎて、ごはんでいっちゃったもんね。蕎麦食べて、蕎麦汁飲んで、お茶碗にご飯盛って、それで天ぷらをたらふく食べる。
ふう。罪だぜ。七つの大罪。暴食の罪で罰せられてしまうよ、ほんとに。そんな僕に耳元でささやくベルゼブブ。
「それ、今しか食えんやつやからしゃーないやん」
…ですよねー。うん。仕方ないのだ、これは。太ったら痩せよう。
僕はそう自分に言い訳をし、腹いっぱいのお腹を抱え、自分の部屋に戻ろうとした。
そして現れるひとつの顔
で、でたーーーーーー!!!バフォメット!!!すんませんすんません!!七つの大罪とか、実はあんまり知らないクセに知識人ぶってごめんなさーい。
…って、うおおおお!!!鹿の剥製だ!うおおおお!!!!30日間、全然気がつかなかった。初めて気がついた。うおぉぉ…。
バフォメットは山羊の悪魔よね。鹿はフルフルっていう悪魔だった。
それにしても、最近はなんの影響なのか、昔ほど動物の剥製を見なくなった気がする。忠犬ハチ公の剥製とか有名だけど、剥製ってなんとなーく可愛そうな気もしちゃうもんな。
これも僕の勝手な感覚なのかもしれないけど…。研究の為の保存方法なんだもんね。うん。
でも、僕はやっぱり死んだ後は剥製よりも、土に還りたいかなぁ…。
とかなんとか、考えられるようになったのは、部屋に戻ってから数分経ったあとのことです。しばらくはビックリして心臓のドキドキが止まりませんでした。ふう。怖かったー。
先生の知り合いが帰った後は…
働かざるもの食うべからず!という事で、今日の午後は鳴門金時の皮むきをします!僕の手も慣れてきたようで、ばけつ1杯パンパンになるぐらいは剥けるようになったぜ。これも30日目ってことを実感するね。
先生の知り合いたちはお蕎麦を食べた後、少しゆっくりしてから帰っていきました。今回の僕は画家と紹介されました。焦りながらも、なんとなーくアーティスティックな雰囲気を出しながら挨拶をする僕。
もう何でもえーねん。僕の正体なんて。
僕はそのことを芋の皮をむきながら先生に、あの時は焦りましたよ〜なんて喋りました。こんな感じでナンテことない会話も出来るようになった30日目。
やあ、僕、パンパンマン!
そんなこんなで日も暮れる。今日は一日が早かったなぁー。周りはすっかり暗くなってきた。芋の皮むきもキリの良いところで辞めて片付けをする。
少年老い易く学成り難しって感じだ。いや、違うか。光陰矢の如しって感じ。ん?それも違う?
なんだろ、充実した毎日を過ごすと時間が過ぎるのが早いってことわざなかったっけ?相対性理論ってやつなんだろうけど。英語だとTime fliesっていうんだってさ。時間が空を飛ぶ。
よし。
楽しい時間は空を飛ぶ
僕が作ったことわざとして、ノグペディアに登録しておく事にしよう。
今日の夕飯は、お昼の残り!まだまだお腹パンパンマンだったので、ちょっとだけご飯の量を減らしておいた。しかし、それにしても天ぷらうまー!
そう言えば、さっきも蕎麦米汁の話をしたけれど、あまり写真をうまく撮れていなかったので、再度紹介。
これが蕎麦米汁!これを飲み干すと…
蕎麦米がごっそり出てくる!さんかくのような形をしたお米だ。これ。この写真を撮るのを忘れていたのだ。
さて、今日は色々な話をした感じがするが、ご飯を食べた後はいつもどおり、山を降りて温泉に行く。
その途中の事である。
目の前に突然イノシシが現れた。猪突猛進とは…
山をうねりうねりとカーブを繰り返している途中、急に目の前にイノシシが現れた。あまりにも突然のこと過ぎて写真のピントも全然合っていない!!
何度かイノシシを見かけた事はあったが、道路のど真ん中でこちらの方を向いているイノシシは初めてだった。
完全に不意打ち。ドラクエのモンスター遭遇のようなシーン。
「イノシシはこちらの様子をうかがっている」
突然、クルリと回り逃げだすイノシシ。動きが早すぎて写真が全部ブレっとる…。
軽トラックをゆっくりと進め追いかける。
こちらを度々振り返り、逃げ続けるイノシシ。先生もゆっくりゆっくり軽トラックを走らせる。別にいじめようとして追いかけているわけじゃなくて、進行方向がそっちの方だからね!
山道だし、Uターンは出来ない。流石にイノシシと軽トラックでは軽トラックの方がスピードが早く、その距離は徐々に近づいていく。
その時だった。
イノシシは突然、真横に飛び跳ねた。
え!?猪突猛進は!?
イノシシはまっすぐにしか進めないのではないのか!?真横に飛んでったぞ!キャプテン翼の若林くんもビックリな横っ飛びである。
イノシシはそのまま草むらに入り、見えなくなった。
ぽかーん。あまりの出来事に僕は口を開けたままその草むらの方を眺めるしかなかった。何だったんだ今の横っ飛びは…。
先生に聞くと、イノシシはかなり機敏にカクカク動けるらしい。横に。
しかも内臓などがギッシリ詰まっているため、見た目よりもかなり重い。その事を知らずにイノシシに突進され怪我をする人が多いのだそうだ。
猪突猛進。四字熟語を信じ切ってはならない。危ない。マジで。稲妻の如く光の速さで方向転換してくるぞ!イノシシってやつは!!
でもね、イノシシは普段は攻撃してこないんだってさ。怪我を負い、手負いになったりした場合だけ襲ってくる。
先生は動物の生態をよく知っている。本当に勉強になるね!
鴨の湯で満月を眺めて…
さてさて、イノシシのそんな出来事に遭遇した後は、何事も起こらずゆっくりと山を下っていった。
今日のお風呂は鴨の湯。結構空いている。僕はお気に入りの露天風呂の位置を確保し、空を眺めてゆっくり浸かる。
満月が綺麗ですね。お風呂上りにケータイでなんとか撮影出来た。星もケータイで撮れたらいいんだけどなぁ。
お風呂屋さんから車に戻ると、僕は悲鳴を上げた。今日は何度ドキドキすれば良いのだろう。
僕が座っている車の助手席に蜘蛛が住み着いていた。女郎蜘蛛と言うのだそうだよ。窓を開けたら入ってきそうだ。気をつけねば。
やはり30日経っても虫が苦手なのは克服出来そうもない。
車が走り出して、結構なスピードが出ているとは思うのだが、女郎蜘蛛はプランプランと風に揺られ、ジェットスキーの如く楽しんでいる。すげーぜ、蜘蛛の糸。全然切れねーでやんの。
ぷぉー。やめてー。こえー。
四国歩き遍路日記30日目まとめ
鴨の湯を後にし、山を登る途中。先生は側溝にハマっている折れた木の枝などを拾うように指示をする。
山の道は自分たちで管理しなければ、誰も綺麗にしてくれない。一応県道だったりするんだけどもね。あまり人が通らない所は後回しなのだ。
道を塞ぐ折れた木や腐った木をドンドン片付けていく。
今日の蕎麦打ちにしても、イノシシにしても、この木の枝拾いにしても普通の生活をしていたら体験出来ないことばかりだ。
そしてその度に先生は新しい知識を教えてくれる。名ガイド。
吾十有五にして学に志す。三十にして立つ。
と論語で孔子が言ってたけど、33歳になってもまだまだ立つに至らず学を志す段階だ。ここには興味があることがいっぱい!
たくさん学んで、自分を形成していこう。
そんな『四国歩き遍路日記30日目』でした。