四国歩き遍路日記32日目。この旅の記録は以前旅をしながら公開していた日記を諸事情によりお蔵入りしまったものを再編集して公開したものです。
今回の日記は、内容が一新されています。まぁ、昔に書いたものは結構精神論を語っているものなのだったので、何かの機会に別の記事で紹介出来たらいいなぁ〜とは思っているのですが、ちょっと宗教臭い話をしているので、今回は徳島の美しさを主軸に語ることにしました。
いや、ほら、精神論だったらさ、この旅日記じゃなくても書けるわけだし、この旅日記だからこそ書けるものを書いていきたいなぁ〜なんて思ったのですよ。
ということでね、前に読んでくれている人からしたら、あれ?全然内容が違ってね!?ってビックリしてしまうかもしれませんが、あの頃の僕が語らなかった新しい一面を日記に記しているという事で楽しんでくださいませ。
ではでは、再編集版よろしくどうぞ。
四国歩き遍路日記32日目のまえがき
『四国歩き遍路日記32日目』はイベント参加日。焼きそばを売って売って売りまくるのだ。ここにやってきた当初も別のイベントに参加して、出店の売り子をやらせてもらったが、あの頃に比べて少しは人との関わりに慣れただろうか。
それにしても、こうやってイベントに参加する機会を僕に与えてくれているここの山の人たちには本当に感謝感謝だな。
そんな事を思いながら昨日の夜に眠った僕は、自分でも信じられないぐらい朝早くに目が覚めたのです…。
→他の日の四国歩き遍路日記はこちらにまとまっています、合わせてどうぞ。
※復刻にあたり、旅先で沢山写真を撮ったものをアップすることにしました。Facebookの方へ高画質のアルバムを作りましたのでよろしければ御覧くださいませ。
バキバキバキと言う音に起こされ…
午前4時半。なにやら外でけたたましい音が鳴った。バキバキバキ!!窓一枚を通してでも聞こえてくるのだから、それはそれは大きな音だ。これは夢か現実か。
僕は布団から抜け出し、窓に近寄った。暗い。とりあえずケータイで外を照らし写真を撮った。もしもこれが夢なら、明日はこの写真が残っていないはずだ。
証拠を残した僕は、窓を開け、なんだ!?鹿か!?と勇気を出して声を出した。
すると、その音がダダダっと逃げていった。だんだん音が遠のいていく。それとともに自分の心臓の音がバクバク鳴っている事にやっと気がつく。
なんだったんだ。いったい。うーむ。きっと鹿だろう。あれは鹿なのだ。ここでの環境も少しずつ推測出来るようになった。あれは泥棒ではなく動物の音。恐れる必要はない。
…でも、泥棒だったらどうしよう。そんな考えが意識せずとも頭に浮かんできてしまうので、怖いものは怖い。布団に戻ってからもう一度眠ろうとしても睡魔は全くなくなっていた。
カステラとサイダー
みんなが起きてくるまで暇になったので、ブログを書きながら時間を潰す。なんか安心したらお腹が減った。周りをキョロキョロ見渡すと事前に買っておいたカステラとサイダーを発見。
これはイイ。小腹に流し込む。意外とカステラって重たいよね。ふわふわしてるけど。
カステラと言えば、その昔、でっかいカステラ作りにハマった事がある。文明堂のCMのようにカットされる前の真四角のでっかいカステラを作りたかったのだ。
新聞紙とクッキングペーパーを使って、一辺が30cmほどの正方形を作りそこにカステラの生地を流し込む。そしてオーブンで焼くのだ。ただあまり知られていない事だが、カステラの出来たてというのはビックリする程美味しくない。
あなたがきっと食べたことがあるであろうカステラのあのしっとり感は、焼き上がった後、2日ほど逆さまにして放置することで生まれてくる。でも僕はその2日間がどうしても我慢出来ずに食べきってしまう。
結果的にパッサパサのカステラを何度も何度も食べることになってしまった。あぁ。食いしん坊バンザイ。
あ、森見登美彦の『四畳半神話大系』って小説を読んで作りたくなったから、よかったらカステラ好きなあなたは読んでみてね。アニメも面白いよ。文体がパソコンを使っているからこそかける不思議な文章で癖になります。
干物と味噌汁
さてさて。カステラ談義をしている間にみんなが起きてきた。
今日の朝ごはんは干物の焼き魚と、味噌汁でサラサラサラ〜♪カステラとサイダーがお腹で揺れる。
お腹がいっぱいだ。く、苦しい。
ん?カステラとサイダーを食べた事はみんなには内緒だよ。
僕はしっかりと出されたものは食べきるのだ。食事前のお菓子の魅力には気をつけようね。
出発は7時。準備は万端!
昨日のうちに準備は全て済ませていたのでほとんどやることはない。冷蔵庫に入れておいたものを車に詰め込み出発。車は2台で行く。軽トラックの方には屋台が出来る装備を全て詰め込んだ。
食材の方はあねさんが乗る車の方に積んだ。昨日の大量の肉とキャベツが山を降りる。
今日の気温は温かい。長袖のシャツを着ていても汗ばんできそうだ。
安い焼きそばの麺に面食らう
うおーーー!!!水墨画のような景色!いつもはこんな時間に山を降りることなんてしないから、いつもの山も景色を変える。こういう環境の中で生活出来るなんて、僕は幸せだなぁ(加山雄三風)。
いつもとは違う景色を写真でパシャパシャ撮りながら山を降りきると、焼きそばを買いにスーパーへ向かった。
先に着いていたあねさんの車を横目に、先生は「あねさんを手伝ってあげなさい」と僕に指示をくれた。
僕はその指示の通り、先生の車を降り、あねさんについて行く。どうやら事前に話はついていたようで、店員さんが奥の方からでっかいダンボール箱に入った焼きそばを2箱持ってきた。
みんなが飲む飲料とともにレジを通る。
や、安い!焼そば麺って、こんなに仕入れ値が安いものなのか!?僕は目を丸くした。あねさんがそれを見て笑う。
まぁ、でもあれか。焼そばって麺だけじゃないもんね。野菜とか肉、ガス代もあるのだし、このぐらいじゃないと元がとれないのだな。
そう考えると妥当だな。うん。いい勉強になった。こういう体験はやろうと思って出来るもんじゃないから、本当に感謝せねばだな。
眉山と言えば…
会場の近くには眉山という山があった。
眉山と言えば、うちの父母から聞いていた山。前にもお風呂屋さんに行くついでに先生に連れて行ってもらったが、ロープウェイで登れるのな!
外から見るとデカいが、近くによると微妙に低い。不思議な山だ。
会場へ到着。
会場はすでに設営テントが立っていた。ここに荷物を下ろす。
徳島駅近くを散策
バーン。何度も何度も軽トラックと会場を行ったり来たりして、荷物を運んだ。ふう。いい運動になった。これで準備万端。とりあえず時間が出来たので、散歩してみる。
橋が綺麗だ。新町橋というらしい。この川沿いは散歩コースに最適っぽい。ちょっと歩いてみよう。
おお!!なんと素晴らしい景色。僕は水のある風景が昔から好きだ。
どうやら、新町川という川らしい。「LEDが魅せるまち・とくしま」と書いてある。ほほう。水とともに発展してきたまちなんだそうだよ。夜になるとLEDがすごい綺麗に飾ってくれるんだって。
ぜひとも夜に来てみたい。それはそれは綺麗だろうなぁ〜。水とLEDって相性が良さそうだもんね。水に映る光。おお。想像するだけでも心がほっこりしてきた事よ。
…とか、のほほんとして右を見るとでっかい甕発見!看板を読んでいる時は全然気が付かなかったので、びっくりして、おわっ!と声を出してしまった。
周りをキョロキョロすると、その姿を見ていた男の人に笑われていた。
僕は耳が熱くなっていくのを感じ、そそくさとその場所を後にした。
川沿いをずっと歩く…。
ここの橋はふれあい橋という名前らしい。結構たくさんの橋がかかっている。これが、さっきの看板に書いてあったように夜になるとLEDで綺麗に照らされるようだよ。ふむふむ。
こんな感じで散策しているとトイレに行きたくなってきた。僕はトイレを探して再び歩く。そして発見。
うぉおおおおお!!!トイレの男性マークが阿波踊りしとる!!面白い!ちょっと前に姉と江崎グリコの工場見学行った時もトイレのマークがグリコポーズしていたのを思い出した。
橋の上から川を見下ろす。ここを時たま人を乗せた船が通る。500円で一周出来るんだってさ。気持ちよさそうだ。
鳩が歩いてた。平和だなぁ。
LEDの説明が書いてある看板を発見。こんな感じで色とりどりにLEDが飾ってくれるらしい。うーむ。なんとしても夜に来たいものだ。
本当にこの町は水が綺麗な所だ。水の都ヴェニスに匹敵するんじゃないだろうか。…とか思って調べてみると、徳島って、ちゃんと水の都として認定されているのな。
水はいい。人間の体の半分以上は水で出来ているのだ。という事は、水の都はもうなんというか、母なる大地と言ってもよかろう。僕は今、母なる大地を踏みしめている!!
ここに来た証として、自分の影をパシャッと写真撮影。野口、降臨!!
胴体、ながっ!!
散歩から帰って焼きそば
そんな感じで充分に徳島の町を楽しんで散歩から帰ってくるとすでにお店の準備が整い、焼きそばを焼き始めていた。はわわ!サボってしまった感満載!!
手伝わねば。
僕は焼きそばを焼いている先生の元へ指示を仰ぎに行った。
すると、焦っている僕に先生はひとつの焼きそばを手渡す。
「まずはこれを食べてからでええけん」
僕は椅子に座り、それをいただく。う、美味い!!ソースの味付けが絶妙だ。これが200円なのか。これは売れる。
先生はドヤ顔で焼きそばを焼いていた。この味は他の人には作れまい。そんな感じの顔だった。本当にこの先生はなんでも出来るのだから、まいってしまう。うらやまー。
ただ、先生の腰にはコルセットが巻かれていた。ここ最近、先生は部屋で腰をマッサージしている事が多くなった。ちょっと前に梅の木から落ちて腰をやってしまったらしく、その腰の痛みが再発しているのだそうだ。
時々、先生が「ワシも歳を感じることが多くなった」と言うのを聞く。超人と思える先生もやはり人間なのだと思うのだけれど、梅から落ちたときも、地面を這いつくばって自分で車まで戻って運転して帰ってきたという話を聞いて、やっぱり超人だと思い直した。
でも、あれだ。今度時間を見つけて、マッサージをしてあげよう。そう思った。
僕の仕事
焼きそばを食べ終えた僕は干し芋を油で揚げた芋スティックという商品のコップ詰めを手伝った。ひたすら揚がってくる芋を紙コップに詰めてお店に並べるだけの簡単なお仕事です。
…が、「百円で買いたい!と思うぐらいに作って」と言われ、僕は苦心する。紙コップが異様に小さい。そして芋は形が様々でバランスが取りにくい。
徐々にバージョンアップしていく僕の積み方。最終的には芋スティック完売。わーいわーい。結構お子さんのおやつにと買ってくれた。こう、いくつか並べて、どれでも好きなの選んでいいよーって言うと、笑顔で買っていってくれる。
僕も少しは売り子として役に立っているのかもしれない。
そんなふうに僕が喜んでいる中、先生はとあるところに言って誰かと話をしていた。そして後ろポケットに手を伸ばし、何かを取り出す。あれは…。
千円札だ。
先生は、募金箱にその千円をサラリと入れた。
そしてくるりと振り返り、笑顔でこちらの方に帰ってきた。おお。なるほど。
募金というのはもちろん、それを受け取る側の人たちの助けになることなのだけれど、それを行った人の心も幸せにする行動なのだな、と先生のその笑顔を見て思った。
僕もある小説を読んでから、何かを購入する時は必ず募金箱を探し、チャリーンと入れる事を習慣にしているのだけれど、それはそれで習慣化してしまって、自分の行動を自分で喜んだりはしなくなっていた。
今度からは僕も募金箱にお金を入れる時はひっそりと笑ってみることにしよう。小さい行動ひとつひとつに幸せを見出す事が自分の人生を幸せなものにする唯一の方法なのだ。
先生を観察していると本当に色々と感じ取れる事が多い。まさに先に生きる人って感じだ。
後の祭りの寂しさよ
さて、なんだかんだ考えさせられたお祭りも終わり、後片付けに入る。やはり祭りの後はなんとなく寂しい気持ちになるね。
あれだけ賑やかだった所も、今ではポツリポツリと人がいるだけになった。
僕らも片付けをし、荷物を積む準備をする。
…。
…あれ?先生の車が来ない。
先生はトラックを駐車場に取りに行ったのだが、どうやら駐車場のバーがお金を払っても下がらず、管理会社が来るのを待っているのだとか。
みなが帰ってしまった。僕は独り、荷物の番をしながら寂しげな公園を見て、たそがれる。
あぁ。なんだかんだで、楽しかったんだな。焼きそば売ったり、芋スティック詰めたり。うん。楽しかった。前回、イベントに参加した時よりも、幻聴は少なかった。
大勢の人間が集まる所は今でも苦手だ。でも、ちょっとずつ前進している。何かに没頭して、みんなと一緒に何かをやる。その事が可能になってきた。誰かと話をすることも出来るようになってきた。
うん。このイベントに参加して良かったんだな。
そうこう考えているうちに先生はトラックを取り戻し帰ってきた。「人間不信になるよ…」と言いながら荷物を積む姿に、僕は笑ってはいけないなと思いつつ、吹き出してしまった。
先生は帰り道、心を温めるためにコーヒーとアイスを買ってくれた。それはとても苦くて甘い味だった。
うどんとうなぎでお疲れさん
今日の夕飯はさぬき麺市場!ここは以前に行ってすこぶる気にいったお店。安いし美味い!
ダイエットなんてなんのその。醤油うどん大400円を注文。
うどんのコシがたまらない!美味しいよ本当に。これ埼玉に進出してくれないものかな。来い来いさぬき麺市場!
僕がこの大盛うどんと格闘している時、先生とあねさんはとても満足そうに話をしていた。結構売れたのだそうだ、焼きそばが。それを見て僕は嬉しくなる。やっぱりイベントに参加してよかったな。
お腹も心もまんぷくになった僕らは、うどん屋を後にし、山へ向けて出発。
…と、言いたい所だが、どうやら明日はお孫さん達が遊びに来るようなので、帰りにスーパーマーケットで買い物をした。
先生は、「みんなよく頑張りました」と、うなぎを買っていた。
人間不信になると凹んでいた先生も、やっぱりなんだかんだで満足しているみたいだ。嬉しい一日になった。
今日を振り返る
山の上の家に戻ってきた先生とあねさんはずっと立ちっぱなしで仕事をしていたため、すごく疲れていたが、楽しそうに今日を振り返る。
今日はこうだった。次回はこうしよう。その姿を見て、僕はまたこういう焼きそばを売ったりするイベントに参加したいなと思った。
やはり笑顔は人を動かす。
楽しく語る3人の前にカマドウマも登場。虫も楽しさにつられてやって来たか。虫が苦手な僕は内心ギョッとしたけれど、今日の楽しい思い出で恐怖が上書きされ、そのカマドウマでさえも良いヤツのように思えた。
会話もひと段落し、カマドウマがどこかへ消えた頃、あねさんが家の風呂を沸かしてくれた。ここの風呂に入るのは初めてだ。今日は疲れていたため、風呂屋へは行かなかったけれど、疲れているがために風呂には入っておこうと家の風呂を使うのだ。
僕は上機嫌でお風呂に向かう。そしてこういうのが幸せというものなのだろうなと思い、服を脱ぎ風呂の扉を開ける。
パタンッ。
ポトッ。
ん?
扉を開けた時に左から何か落ちた。
ぎゃーーー!!!!Gだ!ぎょあわたうぇあおいうjふぁw!!!うわぁーー!!地球外生命体だ!宇宙人だ!うわぁーー!!
ぐぬぬ。
僕はGさんがすごく苦手だ。
持っていたシャンプーや洗顔料、ひげそりを全て放り投げ、浴槽に逃げ込み防御壁を作る。
背中にあったGバスターというなのシャワーを握り、熱湯をGさんの方に向ける。
カタカタカタカタ。
うおおお。なんか音がする!確認出来ないけど音がする!!
カリカリカリカリ。
うううう。もうシャンプーとかせずに上がってしまおうかな。怖い。
音がしなくなる。
シーン。
うーむ。もう大丈夫かな。どこかへ行ってしまったのだろうか。
ナンマンダブナンマンダブ。
僕はそっとGさんの逃げた方を覗き込む。あ。裏返ってる。
ふう。戦闘終了。
無事、生きて帰ってきましたー!!!
ごめんよGさん。僕には君の良さを認められないのだよ。ごめんよ。
ナームー。
ちーん。
四国歩き遍路日記32日目まとめ
今日は朝からものすごい濃い出来事いっぱいな一日だった気がする。物音で目が覚め、徳島駅周辺を散歩し、イベントに参加し、Gさんとバトルする。
人生、落ち込む事もあるけれど、こういう日がたまにあるなら、生きてみるのも悪くない。幸せな日々。もしかしたらこれは僕が見ている夢なのかもしれないけれど、夢が覚めても思い出せるように写真をいっぱい撮っておこう。
僕は自分のケータイに入っている写真を眺めてそう思った。
ここのブログには人物が写っている写真をあんまり載せられないのが残念だけれど、それはこれを読んでいるあなたが想像で補ってください。そこにはたくさんの笑顔があるはずです。
ではでは『四国歩き遍路日記32日目』でした。
今日は疲れたので21時でお開き。僕は食卓に残り、パソコンで先生のお店のネットショップを作る作業を軽くして眠った。