四国歩き遍路日記34日目。この旅の記録は以前旅をしながら公開していた日記ですが、諸事情によりお蔵入りしまったものを再編集したものです。
旅から帰って来てからまとめているものなので、結果がわかっているのですが、ここでやっと旅の半分です。この旅日記も残り半分。いつも読んでくださって本当にありがとうございます。
この旅日記の再編集を始めた頃は、一度は公開を辞めてしまったものなので、書くことが怖くて怖くて仕方がなく、これを書いたら誰かが傷つくのかもしれない。これは書いてはいけない。これは。これは…。
みたいな感じで、書くことに窮屈さも感じながら書いていたのです。しかし最近は書きたいことが溢れて来て、これも書きたい、これも書きたいとスラスラとペンが進みます。
旅の記憶というのは不思議なもの。あの頃はこれは絶対書きたい!これ以外書く内容は薄い!!と思って書いたものでも、あの頃書かずに省いたものの方が書きたくなってきます。
ということで、以前の日記よりもきっと良い内容に仕上がっているはずです。
ではでは、再編集版よろしくどうぞ。
四国歩き遍路日記34日目のまえがき
四国歩き遍路日記34日目になりました。最近は怒涛の日々で、ゆっくりする時間もありませんでしたが、やっと落ち着ける日が来たようです。
みんながみんな充電切れで、グースカ眠るそんな1日。僕はと言えば…。
→他の日の四国歩き遍路日記はこちらにまとまっています、合わせてどうぞ。
※復刻にあたり、旅先で沢山写真を撮ったものをアップすることにしました。Facebookの方へ高画質のアルバムを作りましたのでよろしければ御覧くださいませ。
く、くびがー!!!
朝起きると首が痛い。昨日、「修行じゃ修行じゃ」とお孫さんに肩車させられていた分の筋肉痛だろう。
先生にそれを伝えると、大笑いしながらマッサージしてくれた。本当は先生の方がマッサージを受ける年齢なのだが、立場が逆転してしまっている。なんだか申し訳ないな。
マッサージを受けているうちに、朝ごはんの準備が整ったので、お孫さん達を起こしに行く。離れで眠っていたお孫さんたち。外に出た途端に薄着のお孫さん達はその寒さにブルブル震え、ダッシュで食卓のある小屋に向かって行った。
たしかに寒い…。これでお遍路をするとなると結構しんどいかもしれない。僕のお遍路再開の日はいつ頃にしたらいいだろう。流石にちょっと長居し過ぎているかもしれない。
朝ごはんは昨日の残りのうなぎの切れ端が1つだけ残っていたので僕は1人、プチ贅沢をさせていただいた。
お孫さんたちはカレーを食べる。ご飯の時に先生が「野口くんは首を痛めてしまったので、今日は肩車禁止」と肩車次男に忠告してた。肩車次男は渋々わかったと言う。
あぁ。助かりまーす。
早く仕事して遊ぼう!
昨日はあまり干し芋の方の手伝いを出来なかったので、午前中からお手伝い。子供たちはなんとなく不満そうだったが、僕の後ろをついてくる。
「早く仕事して遊ぼう!」と手伝ってくれたが仕事はまだ始まったばかり。午前中コトコトと作業を続けていると、2人はどこかに消えていった。
消えた少年たち
消えた少年たち。僕はふとオースン・スコット・カードの小説のタイトルを思い出した。
ここに来てからあまり本を読む時間を確保出来ていないが、この旅にはKindle Paperwhiteを持ってきているので、電子書籍で何冊も持ち運べる。こうやって思い浮かんだ物をその場ですぐに買えるのがいい。
Kindle Paperwhiteを先生に見せると、先生は感動していた。
アプリ版もあるので、あねさんが持っているタブレットにKindleをインストールした。それと同時に新聞を読めるアプリも入れたのだが、先生はそっちの方をよく読んでいるようだ。
ちょっとずつ僕の影響が出ているのが嬉しい。スマホとかパソコンとか全く手を付けなかった先生もタブレットを触る日が増えてきている。
それにしても子どもたちはどこに消えたのだろう。
何をしているのかと思えば…
僕は気になり、芋の手伝いが一段落した時に小屋の中を覗き込む。
彼らはあねさんに捕まり、みかんの皮むきの手伝いをしていたのだった。大量のみかんをむき、ジュースを作るそうだ。みかんジュース、楽しみだ。
途中から僕もみかんの皮むきを手伝う。働け働けと煽られる。ぐぬぬ。今の今まで芋の手伝いをしていたと言うのに。
僕は大人の意地を出し、スマホでみかんを早く剥く方法を検索した。『和歌山むき』というのを発見した。これは速い。農家の人がその場でみかんの味見をする時に使われるむき方なのだそうだ。
ただ、このむき方だとみかんが4分割されてしまうので、ジューサーに入れる時に面倒くさい事になる。なので僕は和歌山むきを採用することを諦め、ひたすら普通に速くむく事にした。
指先がみかんで染まる。
どやーーー!!僕は自分に渡された分のみかんをむき終えてドヤ顔で子どもたちを見る。
あれ…。
それどころではないらしい。
子供たちはブイーンとジューサーをどちらが使うかで喧嘩をしていた。やはり子供は面白い。そして難しい。2人で交互にやればいいのにと思うが、どちらも独占したがる。
最終的に折り紙長男が椅子から転げ落ち泣きわめく。ただ足を滑らせたのを僕は見たのだが、折り紙長男は肩車次男が椅子をズラしたと言い張り再び喧嘩は白熱していく。
ギャーギャー、ガーガー!!
その結果、ふたりとも先生に怒鳴られてフィニッシュ。いつもは優しい先生でも、怒るとなかなか怖い。お孫さんたちにはカミナリじーちゃんのように映っているだろう。
これも僕が思い描く家族のカタチ。
じょうごって知ってる?
出来上がったみかんジュース!
喧嘩の後は、二人で交互にジューサーを使い、残った方は漏斗(じょうご)と言われる三角形の道具を使ってペットボトルにみかんジュースを移していた。
これが漏斗。僕は三角ロートって呼んでたんだけど、じょうごとも言うのな。
さて、では出来上がったみかんジュースを飲んでみよう。
甘い!みかんをそのまま食べるとちょびっと酸味があるのに、こうやってジュースにすると酸味が消え、甘い!
不思議だなぁ。
誰も食べないフレンチトースト…
みかんジュースを飲み終えしばらくするとお昼ご飯になる。今日は唐揚げ。僕が1番好きな食べ物だ。
これは止まらない。ドンドン箸が伸びる。た、体重がぁ。体重が増え続けるぅぅぅ…。
あ。左下の方に見えるのはお孫さんに煽られ僕が作ったフレンチトーストです。誰も食べなかったので、僕が全部食べました。うん。味は美味しいんだよ。味は。
やっぱり料理は見た目が重要だ。
秋のドライブと命の危険
結局、あれだけ山盛りになっていた唐揚げ、そして不格好なフレンチトーストをすべて食べてしまった。もう少し自分の食欲をコントロールせねば。げふん。
昼食を終えた僕たちは、商品の配達をしながらお孫さんを送りにご実家へ向かう。
秋の紅葉が始まり、徐々に山の表情が変わっていく。
流れる川の色がすごく緑で綺麗だ。子供達は寝てしまっていたので、先生と一緒に車を降りて川をしばらく眺めて写真撮影。
こんな自然に囲まれた環境で生活出来るのは羨ましい。景色を見ているだけでも全然飽きずに何時間でもいられそうだ。
遠くに見える山もうっすらだがなんとなく誇らしげ。
しかし、子供達はグウグウ眠る。やっぱりあれだよね。こういう自然もさ、あって当然の環境で生活していると感じ方が僕とは違うようになるんだろうね。
外国人が日本の事を日本人よりも知っているなんてことがよくあるけれど、あーゆー感じの感覚がよくわかった。外から見るのと、内から見るのでは見え方が違うのだ。
そんな事を考えながら僕は助手席に乗っていたのだけれど、何やら時折車が不安定になる。車を運転しているあねさん。見るとハンドルを握りながらウツラウツラしている。
これはヤバい。あの山のようにうっすら僕らの命も消えてしまう。僕は先生の方に振り返り、目で合図を送る。
それを読み取ってくれた先生は、「運転を変わる」と、あねさんとドライバーを交代した。
後ろの席に移ったあねさん。ほんの数秒で彼女は子供たちとともに眠りに落ちていった。
昨日、早くに子供と一緒に寝ていなかったけ?(笑)
命の危険を無事回避した先生と僕は2人で会話しながら先に進む。
貫禄のある風貌
トンネルを抜け…
吉野川沿いを走り、第一の配達所へ到着。
車が止まった途端に、何も言わずともあねさんはむくりと起き上がり、折り紙長男を連れて店舗へ向かった。これが習慣というものか。体に染み付いているのだろう。
あ、配達所に入る時には帽子をかぶる決まりがあるらしいのだが、妙にその帽子が折り紙長男に似合っていた。折り紙長男は貫禄ある子どもだ。大人になったらグイグイと人を引っ張っていけるすごい社長になりそう。
徐々に小さくなっていくその後姿を眺め、会ったこともない彼の父親を重ねる。話だけでしか知らない先生の息子さん。でも先生とあねさんが話してくれる内容や、お孫さんたちを見ているとなんとなくイメージがわいてくる。
やっぱりお父さんに似ているなぁ…。
不思議と僕はそんな事を思った。
商品管理と万引き
僕はふと、こういう所に置かせてもらった時、商品管理はどうするんだろうと思った。
例えば万引きされたりした場合。商品を盗まれた店舗が悪いのか、商品を置かせてもらった側が悪いのか。
まぁ、万引きしたその人が1番悪いんだけどさ。でも万が一盗まれてしまった場合、置かせてもらっている側が悪いとなると、店舗で働いている人は別に自分のせいではないからいいか!となると思う。
管理が適当でも自分に非が全くないのだから、万引き犯を捕まえるより、万引きの冤罪でゴタゴタに巻き込まれたくないという気持ちが働くかもしれない。
もし管理している店舗が悪いとなったら、そもそもあまり利益率の良くない商品は置きたくない。世の中に犯罪があるのは確かなわけで、盗まれてブーブー言われるぐらいなら依頼されても断るだろう。
販売委託。お互いがLoose×Loose。Win×Winになるにはどーすればいいんだ?あれかな。責任は折半にして、少しばかり管理してもらっている店舗の分け前を増やせばいいのかな。
うーん難しいね。僕は頭の中で、やっぱりネットショップを早々に作ろうと思った。自分で管理し、自分で販売する。間口も広げられるしいいのではないか。
まぁ、誰もがネットで購入するというわけではないからこういう販売委託は必要なんだけどさ、万引きがある以上そこに生まれてくるゴタゴタがあるぐらいなら、ネット一本に絞ってもいいのかなぁと。ネットショップなら万引きないし。
なんかAmazonの強さについて書かれている本に書いてあったんだけど、万引きの被害って売上の1割ぐらいあるのだそうだよ。1割って10%だよね。1億円の売上があったら1000万円は万引きにあっているって事だ。
そう考えるとすごい額だ。昔、コンビニでバイトしている時に万引き犯のじーちゃんを捕まえた事あるんだけど、店から出た途端に商品食べてた。それだけ万引きってあんまり犯罪って感覚ないのかもしれない。小さい認識で被害は大きい。
しかもビックリなのは、万引きを行う人の割合として高齢者の方が多いって事だ。小学生とか道徳がまだ備わっていない人間が行うもんだと思ってばかりいたけど、そうじゃない。
高齢化社会になって、これからもっともっとおじいちゃんおばあちゃんが増える。そうなると万引きの犯罪も増えていくのかも。それに万引きの対応をする店舗側にとって、拘束される時間ってのも重要だ。
中小企業は少人数で会社を経営している。そこで万引きが発生したとする。運良くその現場を見つけたとして、警察に届け出した後、店員さんは状況説明やらなにやらで結構長い時間必要になってしまうのだ。
それを一度経験すると、次に万引きを見つけた時に警察に届け出するのが面倒だと感じてしまう。そして結局店舗内で対応するってのがあるらしく、結果的にそれを理解出来る年齢の人の万引きが増えるわけだ。
悪循環。万引きって名前、軽い犯罪の認識のはずなのに、なんで「万」なんてデカイ数字使うのかなって思ったけどそういう意味なのかな。
中小企業であればあるほどネットショップは必要なんだと思う。うん。万引き対策にネットショップ。早く作らねば。
そんな事を思っている間にあねさんだけ戻ってくる。折り紙長男はうんこだそうだ。
しばらくした後折り紙長男が戻ってくる。こんもり出たか?との質問に、小さくうんと答え、すぐに再び眠りについた。寝て起きてうんこしてまた眠る。うんこ製造機だなと頭でフフフと僕は笑った。
吉野川パラグライダー
先生が車を走らせた時、僕は後ろの席をパッと盗み見ると、あねさんはまたもやすぐに眠っていた。よく眠る人だなぁ。
外を見るとパラグライダーがフワフワ空を飛んでいた。
おお。あっちにも。こっちにも。吉野川の上空を空飛ぶ鳥とともにあんな風に飛べたらさぞかし気持ちいいだろうなぁ。
高所恐怖症の僕は、空に飛んでいる自分を想像し、ブルブルと頭の中のイメージを消した。こわわ。
静かに放屁…
パラグライダーを横目に、吉野川沿いを走り続ける。ここは本当に景色がいい。空が澄んでいると山と川と道がきれいに並んで素晴らしい世界だ。
ちょっとだけ窓を開け、ゴオオオオオと入ってくる空気を感じていると、2つ目の場所に着いた。お店に車を止めると再びあねさんがムクリと起き上がる。
ねじまきのおもちゃのようにカタンカタンと歩いてお店の中に入っていった。僕はその後ろ姿を眺め、すごく疲れているのだなぁ〜と心で思う。
横を見たら先生も運転席で眠っていた。最近はなかなか激しいスケジュールだったもんな。知り合いが来て蕎麦を振舞ったり、イベントに参加したり、次の日には子供と専務とパワフルな女性の訪問だったり。
休みもなく充分な睡眠も取れていないのだろう。僕は先生とお孫さんが眠る姿を眺めながら、なるべく物音を立てないように助手席でスマホを取り出し、ブログを書いて時間を過ごした。
ぷぅ〜。
あ。誰かが寝っぺした。僕はクサーと1人で静かに笑う。
鉄チン!
あねさんが仕事を終え、車に戻ってきた。先生は寝ていた事をあねさんに悟られないように、ハンドルを握って出発した。あるよね、「今寝てたでしょ?」って聞くと「寝てないけど?」っていうやつ。
昼寝ってのはきっと怠惰と思われがちなのだ。でも大事なのだよ。昼寝って。短眠で有名なナポレオンも馬の上で昼寝出来る人なんだってさ。昼寝をちょこっとするだけで頭スッキリ。毎日昼寝を必ず取るようにすると体調良くなるよ。
さてさて、そんなこんなで実家に到着すると、子供たちはスイッチが入ったように騒ぎ出す。僕は玄関にいたハチのようなでっかい虫にビビって家の中になかなか入れない。
そんな僕をバカにしつつ、子供がやってきてはチーンと股間を攻撃してくるので、鉄壁のチンチン!とガードに入る。鉄壁のチンチン。なかなか口滑りの良い言葉だな。
鉄チン!と僕が略して言うとそれがツボに入ったらしく、腹抱えて笑っていた。鉄チンの野口、ここに降臨。
少しだけ強くなった僕は、ハチのような虫の横をサラりと通り抜け、家の中に入った。
四国歩き遍路日記34日目まとめ
今夜はハンバーグ!先生のご実家で美味しい夕食を頂いたあと、今日はみんな疲れているから早めに帰るかと、ご実家を出発。
そして今ではお馴染みになった鴨の湯へ向かった。
だいぶ遅くに行ったのでお客さんはほとんどいなかった。
こんなに車がたくさん停まっているのに不思議だと思って先生に聞くと、夕方らへんはお父さんがたがお風呂に入りにきて、夜遅くにすべての家事を終えた奥様がたが入りに来るんだってさ。
きっとこの車はすべて奥様がたのものなのだろう。あねさんの方は混んでいるかもしれないが、男湯は貸切のようで嬉しい。
やはりスマホのカメラではきれいに撮れないし、なんか最近このiPhoneのカメラがバグってきてブレブレだが、今日も満月だ。
露天風呂でお月さまを眺めながらお風呂に浸かりササっと出た。今日はゆっくりと眠ろう。
山の小屋へ戻ると、先生とあねさんと僕の3人は電池が切れたように早々に解散し、布団に入った。
溜まっていたブログを書くチャンスだな!とか思っていたけど、なんだかんだで僕も疲れていたようだ。
気がつくと部屋の電気をつけたままスマホを握って眠っていたのでした。
ではでは、そんな『四国歩き遍路日記34日目』でした。
前回はなが~く書いてしまったので、今日はこのぐらいの長さで。いつも最後まで読んでくれて本当に本当に、ありがとうです。