四国歩き遍路日記35日目。この旅の記録は以前、統合失調症の僕が歩きお遍路の旅をしながらその場で公開していた日記ですが、諸事情により公開を辞めてしまったものを再編集したものです。
毎回ここで紹介しきれない写真などはFacebookのアルバムで公開しているのですが、今日の記事では実はその枚数がものすごく少ないです。
え?じゃあ内容も薄いの?って感じですが、そうではなく、残念ながら僕が撮ったたくさんの写真には、個人情報とか、プライバシーに関わるもので見せられないものがたくさんあって、削除せざるを得なかったのです。
なので、出来る限りは写真の加工でモザイクなんてものをかけたりして紹介していますが、写真で足らない情報は、その分文章で説明出来たらいいかなって思います。
ではでは、再編集版よろしくどうぞ。
四国歩き遍路日記35日目のまえがき
四国歩き遍路日記35日目です。久しぶりにゆっくり出来る日。今日は朝から、馬のしょんべんを飲んだり、ながーーーい棒で素振りをしてみたり、パソコンで見えない敵と戦ったり…。
ここでの生活は飽きないものです。あねさんと二人で話をしたことをも大変勉強になりました。さて、一体こいつは何の話をしているのかとお思いのあなた。その内容はこれから書くことを読んでいただければ、わかっていただけると思います…。
→他の日の四国歩き遍路日記はこちらにまとまっています、合わせてどうぞ。
※復刻にあたり、旅先で沢山写真を撮ったものをアップすることにしました。Facebookの方へ高画質のアルバムを作りましたのでよろしければ御覧くださいませ。
お湯ぬるい論争勃発!
昨日、その前と朝から尾根に行ったり、たくさんの訪問者やお孫さんのお泊りで忙しかった朝。今日は久しぶりに3人でゆっくりとした朝を迎える。
天気もよく気持ちの良い朝だ。
そんななんでもない朝にこそ事件は起こるものである。
舞台は朝ごはんを食べる食卓。今日の朝は煮物や煮魚、唐揚げ、明太子、お新香と結構豪華ではあるが、これらのほとんどは残り物だ。
その朝ごはんを食べつつ、会話をする。
そして茶を飲む頃にその事件は起こった。
先生は、子供の頃から母親の教えで、朝はどれだけ忙しくても一杯のお茶を飲む習慣がある。それが心を落ち着かせ、一日を冷静に過ごせるというもの。
僕もここに来てからお茶を飲むようになったが、確かに一杯のお茶を飲むと落ち着くような気がする。僕は猫舌なので、フーフーしながら飲まないといけないのだが、それが深呼吸する事につながっているのかもしれない。
水分を取らずによく痔になってしまう僕としては、実家に帰ってからもぜひ続けたい習慣である。おかげでお腹の調子も快調だ。
さて、前置きはこのぐらいにして二人の会話を続けよう。
そういって、先生は熱々のはずの茶色い急須を両手で包み込む。
あねさんも負けてはいない。沸かしたと言い張る。
その後も「味噌汁もぬるい。これは野口君用の温度だ!」と繰り返される。
とばっちりを受けた僕は苦笑いをするしかなかったが、先程も言ったように、猫舌である。そしてこの味噌汁を飲んでみると、確かにちょうど良い温度。…という事は、普通の人にとってはぬるい温度という事になるのだろう。
先生はあねさんをこの後も問い詰め、結局あねさんが寝坊してお湯を沸かしていない事を白状した。
かなりピリピリとしたムードだったが、馬のションベンはこんな感じの温度なのか、もしかしたら、なんでも知っている先生は馬のションベンを飲んだことあるかもしれないな。いや、流石にそれはないか。…でもありえるから怖いよな。と頭の中で思って、ひとり笑いをこらえながら馬のションベンと呼ばれた味噌汁を飲んだ。
そしてやっぱり人と言うのはこだわりがあるから喧嘩をするのだなぁとも思った。人とぶつかる時は基本的に自分の主張を人に押し付けるから衝突するのだ。
先生が前に言っていた「お天道さんが見てくれている」というものを改めて実践していこうと思った。自分の主張を無理に相手に伝える必要はない。自分の信念は心の奥底に強く持っていればいいのだ。自分でガーガー言わなくとも、お天道さんは見てくれている。それでいい。
世の中の宗教戦争なんてものもそう。幸せのために始めた宗教が、いつのまにかこれがこれが一番だ、この説は間違っている、ここが聖地だ!なんていう主張をしはじめてしまったから幸せの真逆に位置する戦争が起こってしまうのだ。
自分の心の中だけで、“これが一番、この説が自分は正しいと思う、ここが自分にとっての聖地”みたいな感じで思えばいいのだ。人がなんと言おうと自分が心で思っている事までは干渉出来ない。
そしてそれを心で思うことで幸せを感じられれば、もうそれでオッケーじゃないか。わざわざ人と争って嫌な気分になる必要はないってもんよ。人とぶつかってばかりの僕は気をつけないとな。
なーんて偉そうな事を思いながら、僕は美味しく朝ごはんを食べた。唐揚げが一個残っていたので僕はそれだけで幸せなのです。うんうん。
二槽式洗濯機
ご飯を食べた後は洗濯をする時間をもらった。僕は3日に1度洗濯物をする。今日はその洗濯の日だ。この時間だとまだまだ太陽の光は洗濯物を干す場所のところまで届いていないんだけれど、、部屋干しでもなんでもしなければならない。
だってパンツが3つしかないからね!
旅に出た時は10月のはじめ。まだまだ歩いていると汗をかく陽気で、半袖のポロシャツと白装束だけで充分で、極力荷物を少なくしたかった僕は最小限のものしか持ってきていなかった。1ヶ月ちょっとで帰る予定だったし。
しかし、ここに長く滞在する事になり、11月の山の上ともなると流石に寒くなってくる。そこで先生はちょこちょこどこからか、新しい洋服を引っ張り出してきてくれて、僕に与えてくれるので寒さはなんとかなっているのだが、パンツは3枚。
という事で今日は洗濯をするのだ。この二槽式の洗濯機にも慣れてきた。全自動ではないこの洗濯機は15分したら自分で脱水コックをひねり、排水。そして脱水槽に移し替えて回さねばならない。
この脱水槽がまたやっかいな代物で、水で濡れた洗濯物をそのまま団子状態で入れて回すと、ドカンドカンドカン!!とぶっ壊れてしまいそうな音で唸りあげ、脱水が出来ない。
なので、ひとつひとつ丁寧に玉にならないようにふわっと脱水槽に突っ込んで、上下左右バランスよく体積が分散するように入れて回す。するとシュワンシュワンブルンブルンと脱水してくれる。
15分という体内時計も身についてきたし、このクセの強い二層式洗濯機も使えるようになってきた。これもここでの生活が長くなってきたということだな。
あ…。
また色落ちしちゃってるよ。なんでなんや。僕の白いシャツもすっかりねずみ色になってきた今日このごろである。
さよなら逆転ホームラン
ところで、お気づきかもしれないがこのブログでは毎回必ず食べ物の写真を紹介しています。親がこのブログを読んでいるということもあって、旅の記録として一番わかりやすいのはそこで食べているものだと思うので。
僕はあまり写真を撮るのが上手ではないので、美味しそうには撮れてはいないかもしれませんが、写真の数が物語っているように毎日毎日美味しいものを食べさせてもらっています。
それはそれは本当に美味しい食べ物ばかりです。おそらく僕の両親が一番ビックリしていると思いますが、魚があまり得意ではない僕が魚ウマー!とか書いちゃっているぐらいです。
そして、当然ながらこれだけたくさんのものを食べているということは、運動する量よりも食べる量の方が多いのです。
つまり。
…太ってきました。
こりゃいかん。太るのはまだいいとして、運動不足がいかん。なんとか出来ないもんか、と僕は実家に住んでいる時にやっていたルーティンワークを取り入れることにした。
それが素振り。
素振りはいい。体全体の筋肉を使う。しかしここにはバットがないのです。僕はふと、高校時代に投槍で素振りをしていた事を思い出した。
ふむ。別にグリップがなくてもいいのか。てか、この木の枝すごくいい感じの太さじゃないか?
僕は広い場所に出て振ってみる。おお!!いい感じに身体に来る!僕はあねさんを呼び、写真を撮ってもらうことにした。今からその写真を公開する事にしよう。
ぐっ!
しゅっ!
ぶわあああーん!
カッキーン!!
うむ!今日からこの棒で毎日素振りをする事にしよう!筋肉をつけなければ。歩き遍路再開の時に貧弱な身体じゃ周れないもんね。ちなみにこの時に着ているセーターも先生が出してきてくれたものだ。
僕のサイズにピッタリの服があるのも不思議なものだ。結構自分で買うときも袖が短かったりするんだけれど、これは袖の長さもちょうどよい。
何度かその長い枝で素振りをして汗をかいた後、先生にこの木の枝をもらえないもんか?と聞きに行く事にした。すると…
との事。
そしてもらったのがこの棒。さっきのよりちょっと短いけど、だいぶ重い。しかし握りやすいのでこっちの棒を振る事に決めた。おそらく農作業かなにかに使っていた道具の先っちょがとれちゃった棒だろう。
よし。
今日から、運動不足とはさよなら逆転ホームランだ!!
ダイエットの為にする事
さてさて毎日の運動量が増えた事を祝して、早速食べる事にしよう。またもや食べ物の写真になってしまうが、今日のお昼はカレーうどん。
うん。美味しいカレーと大好きなうどん。美味しくないわけがない!
運動したから食べる。こいつ太るわ〜と、お思いのあなた。量を見てくだされ。今までの写真と違い、コレだけ。そうコレだけ!
今まではたくさんのおかずにたくさんのおかわりを続けてきましたが、これからの僕は違う!食べる前にコップ一杯の水を飲み、お腹を膨れさせ、それからほんの少しの主食を食べる。
これを続ければ痩せるはず!…うん。
…右上に小鉢が見切れているのは秘密だよ!!
僕の知り合いが小屋に来る!?
えー、僕は数年前からブログで収入を得るという方法というのを人に広めているのですが、今年の夏頃から始めた人に「東京OLちゃん」という方がおります。
ここのブログでも3日前ぐらいに名前を出しましたが、滝行とか行っているちょっと変わった人です。
彼女はPCもちんぷんかんぷんで機械に弱く、ついこの間スマホにしたばかりですが、そのスマホを使って記事を書くスタイルでブログを始めました。
ですが、まだ始めてから間もないので旅中もちょこちょこ連絡が来まして、わからない事とかに答えています。
んで、カレーうどんを食べ終えた頃、小休憩中に彼女のブログを覗いてみると、間違いを発見したのでちょこっとLINEで連絡。
そしてブログを書くのって実は結構大変なもので、気を抜いているとすぐにダレてしまうので、目標設定をしました。年内に50個の記事を書くっていう感じで。半年で50個って言えば3日〜4日で1個書くペースです。
(↑プライバシー保護の為、画像加工をちょこっとしました!!)
んで、その後のLINE内容が↑の画像です。
…彼女の方からなんとここの小屋に行きたいとの申し出が!
僕はビックリし、飛び跳ねた。そして先生たちにご迷惑をかけてしまうのではないか!?という思いで一杯になる。
もちろん東京OLちゃんに先生の事を知ってもらいたいと思うのだけれど、僕なんぞがそんな大それたお願いをしていいのだろうかと。
なんというか、僕は関わる人関わる人、大きな迷惑をかけて傷つけてしまうので、自信がないのだ。
しかし、やはり先生の言っている事は素晴らしいので、東京OLちゃんに先生を会わせたいし、なんやかんやごちゃごちゃ頭の中で考える前に聞いてみようと思った。
すると二つ返事で、
という答えが返ってきた。
は、はやい!なんのためらいもなく返事してくださった。
おおお!!!なんと温かい精神!僕は嬉しくなり、すぐに東京OLちゃんに返事を返した。
すると更にビックリな事が。
はやっ!!予約取るの早っ!!
なんというアクティブさ!本当に東京OLちゃんの行動力には毎回驚かされる。手話のミュージカル出たり、ホノルルマラソン出たり、富士山登ったり、滝行したり…。
でもこのアクティブさはたまに僕を大きく救ってくれます。
手話のミュージカルを見に行った時、僕はまさに病気の最悪の状態で、幻聴で眠れないし、吃音もひどすぎて人とはしゃべれないし、チックはひどいし、薬も体に合わないし、躁うつは起こるし…って感じだったのです。
それでも手話のミュージカルってどんなのだろう?耳が聞こえないのにミュージカル?なんていう好奇心から幻聴を我慢して電車に乗ってでかけました。
そこで見たミュージカルに僕は涙。
自分は一体何をやっているんだ。こんなにみんな一生懸命輝いているじゃないか!幻聴が何だ。吃音が何だ。薬が何だ!!統合失調症がなんだー!!
そんな感じで僕の闘病生活のターニングポイントになった出来事を提供してくれたりするアクティブさなのです。
ということで、東京OLちゃんが飛行機の予約を取った事を先生とあねさんに伝える。
「楽しみやね。ほんま人間の縁というものは不思議なもんや」と、2人が笑う。
うむ。確かに不思議だ。先生との出会いも偶然というには出来過ぎているものだし、まさか東京OLちゃんと徳島で会うとは…。この縁に感謝しよう。
東京OLちゃんがここに来て色々と感じとってくれるのが楽しみだ。星もやっと人に見せられる。晴れますように。
ネットショップの準備に…
午後は先生が外出するらしいので、僕は鳴門金時の干し芋作りの手伝いをし、あねさんは僕がお願いしたネットショップ用の写真を撮ってくれていた。
…が、写真というのは難しいもの。光の加減とか角度とか色々と苦心しながら撮っていたようだ。
そしてあねさんがバッチリ!と納得出来た写真。それはネットショップ開設の時の楽しみに取っておいてもらおう。待っててね!
…早く作らねば。
カマキリと共に
あねさんは写真を撮り終えると家の中に入っていった。僕は1人、風景を眺めながら鳴門金時の皮をむく。気がつけば山の中に太陽が沈む時間になっていた。時間を忘れるとはこういう事だな。
ふむ。本当にここでは色々な事があったもんだ。歩き遍路2日目にして先生に出会い、それから普通の生活を送っていては体験出来ないような事を沢山経験させてもらい、普段は考えつきもしなかった考え方などを学んだ。
1ヶ月か。すごく早いもんだ。毎日があっという間に過ぎていく。この前も時間について考えたけど、充実した人生を送っていたら気がつかない間におじいちゃんになっているのだろうか。
あっという間。体感した時間は早く過ぎていくけれど、思い出を振り返ると決してあっという間の時間では振り返りきれない程たくさんの記憶が残っている。時間というのは不思議だ。相対性理論のアインシュタインは本当に天才だったのだな。
それにしても、「あっという間の人生だった…」と、僕は死ぬ時にそんな事を言いながら、前歯に海苔をくっつけて笑って死にたいものだ。それを見て周りの人は泣きたいのに笑ってしまう。
そんな変な雰囲気の人たちに囲まれて最期の睡眠を迎えるのだ。
仕事の片付けをし、縁側に腰を下ろし太陽を眺めながら僕がそんな事を考えていると、すぐそこにカマキリが立っていた。あぁ。お前も黄昏ているのかい。
「え?なんか言った?」と言うかのごとく振り返るカマキリ。堂々と立っておる。カマキリってなんとなく緑色のイメージが強かったけど、あれなのかね。秋頃になると体の色が変わるのかしら?
今日もバケツ一杯分の芋をむきました。
寒くなってきたので、部屋の中へ入ろう。
壊れたノートパソコン
僕が鳴門金時の皮むきを終え部屋に入ると、あねさんが奥からノートパソコンを持ってきた。「ちょっと見てくれる?」と電源を入れる。
少し待つとログイン画面になるのだが、パスワードが勝手に「●●●●●●●●●●●」と入力される。正しいパスワードを打ち込んでも上書きされてしまい打てない。
な、なんだこれは。ログイン出来ず、文字も伏せてある為、何の文字が打たれているのかすらわからない。
こうなったら、ノートパソコンのキーボードを全部取り外そう。
FILCO キーボード キートップ引抜工具 Keycap Remover KeyPuller プロ仕様 キーボードメンテナンス用工具 黒
僕は結構なキーボードマニアで、キートップっていうパチパチ押す所をカスタマイズしたりするんだけれど、その時に↑これのような道具があると便利だ。
…が、当然ながらここにはそんな道具はないので、指先の爪を使って1つ1つのキートップを外してみる。
パチッ。パチッ。パチッ。
パキッ。
あ…。
スペースキーが割れてしまった!!やっぱり修理する時は道具を使わねばいかんのだな。ぷおおおお。なんてこったい!!
僕は焦りながら、あねさんに割れてしまいました!!ごめんなさい!!と謝る。「別にえーよ。元々壊れていたけん」とあねさん。
しかし、その瞬間、パソコンの入力が止まった。おお。スペースキーが原因だったか。ログイン画面にパスワードを打ち込み、見事ログイン成功。
色々と試してみると、GとFも入力出来ない。僕は仕方なくノートパソコンのキーボードを無効化させ、USBでキーボードを認識させた。持ち運びには適さないけれど、これで普通にパソコンとして使える。
ただ、キーボードがデスクトップについていたものしか無いから後日T-ポイントでも使ってUSBキーボードでも買おうかしら。
四国歩き遍路日記35日目まとめ
先生がまだ帰ってきていないので、あねさんと2人で夜ご飯にした。考えてみればあねさんと二人で食事をするというのは今回がはじめてだ。いっつも先生がいて当たり前という感じだったけれど、こういう夕食も新鮮だ。
普段は先生の話を2人で聞く感じだが、今日はゆっくりとあねさんの話を聞いた。
先生の一番弟子。話し方の視点は違うが、色々と学ぶ事が出来た。あねさんは普通の仕事が出来ない。みんなと一緒に働くと窮屈になってしまうのだ。だから下界は諦めたと言っていた。
それでも時にはみんなと一緒にいなければならない時がある。そんな時に今までは衝突ばかりだったようだが、先生と出会い色々と教えてもらって対処出来るようになった。
人との距離感を測る。合わない人でも2〜3時間なら我慢できる。楽しいは伝染する。などなど。
今日の朝は先生と言い合いをしていたあねさんだが、やっぱり先生の事を尊敬をしているのが伺える。僕はその関係性を羨ましく思った。うむ。早く東京OLちゃんに先生を紹介したいものだ。
どんな感想を抱くだろうか。
そんな感じであねさんの話に耳を傾けつつ、色々と考えていると、先生が帰ってきた。疲れているようで今日は早めに解散。
なんとなく前向きになれた四国歩き遍路日記35日目。