ブログ小説も四回目の更新になりました。なぜ前回、三日坊主の話をしてしまったのか。本来ならば今回こそがその話にふさわしい内容だったんですが…。
毎回、ブログ小説の本編に入る前に道入の文章を書いているんですが、四日目にしてネタが尽きてしまいました。だったら書かなくてええやんって話なんですが、そうもいきません。
この冒頭こそが重要なのです。
ブログ小説をただ書いただけでは、読んでもらえません。なぜなら検索結果に表示されないからです。ブログはタイトルと中身の一致が重要なのです。
なのでタイトルにブログ小説と書いている以上、中身にも「ブログ小説」という言葉を使わなければなりません。しかし、作品内にそれを含ませるのは難しいので、この冒頭部分に入れ込むのです。
…という事でいい感じでブログ小説という言葉を使えたのではないでしょうか。いくつあったか数えてみてくださいませ。それが全体の2%ぐらいを占めてくれたら良いのですがね。
何の話をしているのか全くわからないという場合でも心配ありません。すべてを読み終わる頃には理解出来ているはずです。
…という事で回を重ねるごとに読者が増えてきているこの企画。過去に書いた小説をブログ形式に変換して投稿していきます。タイトルは映画のような人生をです。
全部で39章分あるのですが、今回はその中で第四章「ファンシイダンス」をお送りしたいと思います。よろしくどうぞ。
【ブログ小説】映画のような人生を:第四章「ファンシイダンス」
ぼくの目の前には見たことのない男が一人立っていた。病弱とも取りかねないほどに華奢な体だが背は高い。細めの白いボタンダウンシャツを首まできっちりとボタンを留め、色の落ちきった薄いブルージーンズをはいている。その濃淡のない服装のせいで細い体が余計に細く見える。
しかし靴だけは、はっきりとした赤のエナメルのスニーカーでひときわ目立っている。中でも妙なのは見事なまでに剃髪されたツルツルの頭と恐ろしいほど落ちくぼんだ両目だった。
「伊波、久しぶりやな」そのガリガリの坊主頭は言った。
「あぁ」とぼくは答える。久しぶりなのか?
「最近、伊波、大学で見かけなくなってしもうたのう」ぼくの事を知っているような口調だ。でもぼくは知らない。
「なんか大学がつまらなくなってな」それらしい理由を述べてみる。
実際は自分でも、なぜ大学に行かなくなったのか分からない。気がついたら家にいた。でもそんなこと今はどうでもいい。こいつは大学で会った事がある奴なのか?
記憶を遡ってみたものの、こんな奴に会った覚えはない。入学当初、多くの人に話しかけたが顔はそれなりに覚えているはずだ。その中にこんな奇妙なガリガリの坊主頭はいなかった。
それになんだ、この変な訛りは。妙に耳に障る。ぼくはこいつが誰なのかわからない事に段々腹が立ってきた。
「お前の方はどうなんだ?」ぼくは探りを入れた。なんとでも取れる表現だ。さてどう答えるだろう。
「まあまあやな」ツルツルの頭を掻きながら坊主頭は言った。それじゃ何もわからない。早く正体を明かせ、この野郎。気持ちが悪いだろうが。
もう我慢できなかった。
「すまないが、名前教えてくれるか? お前の名前を忘れてしまって。いや。むしろ、いつ会ったかな? それすらわからないんだ」
こいつの事は何一つ覚えていない。そもそも、覚えていないのか、会ったこともないのか、それすらわからなかった。
すると奴は頭を掻きながら、「なんや伊波、親友の名前を忘れてしもたんかいな。ひどいやっちゃな」と答えた。
そしてちょっと顔を歪ませながら「千葉や千葉。入学式の時、隣の席やった千葉」とさらりと言った。
ぼくは当惑した。
ぼくの知っている千葉の顔とは、何一つ似ていなかったからだ。全くの別人であると言ってもいい。こいつが千葉?
「本当にお前、あの千葉か?」驚きのあまり、ぼくはそう口に出していた。
「どの千葉か知らんけど、大学最初の親友の千葉やで」すぐに千葉はそう答えた。
「悪い。あまりにその、外見が変わっていたから。千葉だって全然わからなかった。お前、すごく痩せてないか?」
「確かに、前の千葉とは違う千葉だとは言われるな。事実、変わったしな」千葉が笑いながら答えた。変な表現だと思った。
「全くの別人に見えるぞ。痩せすぎなんじゃないか。しかもその頭。お前、前見た時は肩まで髪の毛があったじゃないか」
頭の話をしながら実際に手で触れてみる。触れずにはいられないぐらい見事な坊主頭だったからだ。
「今、梅雨やろ? あんだけ髪の毛長いと、湿気でうねってしもうてしかたないねん。これ便利やで」といい音を立てて頭を叩く。
人は髪型一つでこうまで変わるもんだなと思った。言われてみれば、この胡散臭い関西弁が千葉のような気がしてきた。ぼくは少し安心した。そしてすぐに、何をしに来たのだろうと疑問に思った。
「ところで伊波、何かサークル入っとん?」急に千葉はぼくの眼をまっすぐ見て、そう言った。
坊主頭にすると人の心が読めるようになるのかと思ってしまうほど、ピッタリのタイミングの質問だった。
【ブログ小説】映画のような人生を:第四章「ファンシイダンス」あとがき
さて、毎回このあとがきで全く本編に触れていないっていうのは、あとがきと言えるのだろうか?という疑問はあるんですが、本編に触れないのは恥ずかしさがあるからです。
この作品はその昔、僕が離婚をして全ての夢がなくなってしまった時、友人に薦められて書いたものです。
人生の目標がなくなり、非常に死に近い暮らしをしておりました。
朝起きて、自分を嫌いになり、昼を過ごして、自分は一体何をしているのだろうかと空虚になり、夜を迎えて、一日何もせずに過ごしてしまった事を悔いておりました。
そんな時に友人はとりあえず締め切りを作れと言いました。期限がない暮らしをしていた僕はその言葉でとりあえず昔から書いてみたかった小説を書いてみようと思い立ちました。
原稿用紙250枚分。当時、村上春樹が好きだった僕は、彼が一番最初に受賞した講談社主催の群像賞の枚数に合わせて400字詰めで250枚。約100000文字の小説を書いてみることにしたのです。
期間は半年。
夏休みの宿題も8月の最後の方に終わらせるタイプだった僕は、いざ机の前でペンを持ってみても、まだ半年あるからなと中々ペンが進みませんでした。
しかし、時間は有限です。じわじわと締め切りが迫ってくると、とにかく気に入らなくても書いてみよう。書き終えてから直すことにしようと、焦りの気持ちを持ちながら書いたのです。
そして締め切り1ヶ月まえに出来上がった小説。ケータイ電話に入れて何度も読み返してみたりしてみましたが、いまいち面白くありません。
そこでたまたま連絡をくれた中学校時代の友人にお願いして添削をしてもらうことにしました。
読んでもらって不満な所を書き直し、もっとこうしたら良いんじゃないかこうしたら良いんじゃないか?といわれた所を書き直す。ある種それは合宿みたいな感じで楽しかったのです。
そして締め切り当日。僕は原稿用紙にコピーして合計8人ほどの人に読んでもらいました。
結果、賛否両論。
贔屓目が入るであろう身近な人でさえそうなのだから、僕はこの作品がまだその域に達していないものだと判断しました。
まぁ、つまりは自信がなかったわけです。しかし、書くことって楽しいなぁ〜と思える体験ではあったので、そこから本格的にブログ運営に移行していって今に至るんです。
それである程度ブログの事がわかってきた上で、ブログ上で小説を読んでもらったらどうなるのだろう?という興味が湧いてきました。
なので今回こうしてブログ小説として生まれ変わらせているわけですが、書きながらちょっとずつ書き直しております。少しでも楽しんでもらえるように。
今度は賛否両論の賛が5.1ぐらい否が4.9ぐらいの割合になってくれたら良いなぁ〜。
ではでは、四回目にしてはじめてあとがき的なものを語りました。【ブログ小説】映画のような人生を:第四章「ファンシイダンス」どうだったかな。
野口明人
ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。
【ブログ小説】映画のような人生を:次回予告
注意:
ここから先は次回の内容をほんの少しだけ含みますが、本当に「ほんの少し」です。続きが気になって仕方がないという場合は、ここから先を読まずに次回の更新をお待ち下さいませ。
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「いや、特に入りたいサークルがなかったんだ」そうぼくは答えた。
嘘だ。正直な話、入りたいサークルは山ほどあった。しかし、サークルとは誰かが誘ってくれて一緒に入るものだと思っていた。伊波一緒に入ろう、と。その言葉を待っていたが、誰もぼくを誘ってはくれなかった。歓迎会でお酒を飲み、仲良くなっても、誰もその言葉を言ってはくれなかった。だから入らなかった。ただ、本当は入りたかった。サークルはどこでもよかった。みんなと一緒の空間で過ごせれば、どのサークルでもよかったんだ。なのに。次回へ続く!
【ブログ小説】映画のような人生を:今回のおすすめ
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映画のような人生を